専門医が教える パンツの中の秘密

男性だけじゃない 女性にも“夜間勃起”と“朝立ち”がある

写真はイメージ
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 男性の体は「ヒトの基本形」である女性で、それが性分化したものです。一般的には男性の亀頭は女性のクリトリスに相当するといわれていますが、解剖学的には男性のペニス(陰茎)は女性のクリトリス(陰核)に相当します。ですから男性のペニスが性的興奮で勃起するように、女性のクリトリスも性的興奮によって充血して膨張し、勃起します。

 ペニスとクリトリスは外見では分かりませんが、尿道口が別のところにあるだけで同じような構造をしています。ペニスは海綿体に血液が充満して、サオの部分と亀頭が硬くなります。クリトリスも海綿体組織でできていて、サオの部分に当たる「陰核体」は体内にあります。そして、ペニスの亀頭の部分が、クリトリスの「陰核亀頭」として体の外に突起しているのです。

 このようなことから分かるように、男性特有と思われている性的興奮と関係なく起こる「朝立ち」は、女性にも起こるのです。しかし、ペニスの大きさが人によって違うように、陰核亀頭の大きさにも個人差があります。男性と違って圧迫感がないので、朝立ちしても自覚している女性は少ないようです。

 では、なぜヒトは朝立ちをするのでしょうか。それは健常であれば、一晩に3~5回、寝ている間に勃起する「夜間勃起」という生理現象が起きているからです。夜間の睡眠は「ノンレム睡眠(深い眠り)」と「レム睡眠(浅い眠り)」を交互に約90分周期で繰り返しています。夜間勃起はレム睡眠のときに起こります。睡眠の前半3時間は深い眠りが多く、後半になるにつれレム睡眠が増えてきます。朝目覚めるときはレム睡眠が多いので、その最後の夜間勃起を朝立ちとして自覚するのです。

 では、夜間勃起は何のために起きているのかというと、生殖器を維持するメンテナンスです。睡眠中は副交感神経が優位になり、リラックスした状態で脳や体の機能を回復させています。ペニスの筋肉や海綿体などの組織も、他の器官と同じで使っていないと衰えてきてしまいます。それで夜間に自動的に勃起が起こり、血管を拡張して酸素や栄養を送り、老廃物を排除するというメンテナンスが行われているのです。

 ところが、糖尿病などで動脈硬化が進行し、血管が拡張しなくなると夜間勃起がなくなり、性的興奮があっても勃起しない「器質性ED」となります。それで朝立ちの有無が「健康のバロメーター」といわれるのです。

 朝立ちがあるのに性交時に勃起しないようなら、精神的・心理的な問題で起こる「機能性(心因性)ED」が疑われます。

尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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