適度な運動は健康に良いイメージがあると思います。過去に報告された論文でも、運動習慣のある人では、そうでない人に比べて、健康で長生きする可能性が示されています。
しかし、運動が継続的に行えるような人は、そうでない人に比べて、もともと健康状態が良好であると考えられ、必ずしも運動そのものが長生きをもたらしているとは言えません。運動をする人と運動をしない人で、運動以外の生活習慣や健康状態がほぼ同等でなければ適切な比較は難しいのです。
2020年10月7日付の英国医師会誌に、運動が死亡率を低下させるかどうかを検証した研究論文が掲載されました。この研究は、運動をさせる人と、そうでない人の生活習慣や健康状態がほぼ同等となるような手法で行われました。具体的には、高齢者1567人(平均72・8歳)を対象に、週2回、強めの運動をさせるグループ(400人)、中等度の運動をさせるグループ(387人)、運動に関する推奨事項(ガイドライン)に従うよう助言したグループ(780人)の3つの集団にランダム(でたらめ)に振り分け、死亡率が比較されています。
その結果、5年間における死亡率は、運動をさせたグループ(強めの運動と中等度の運動の合計)で4・5%、推奨事項の助言グループで4・7%と、明確な差を認めませんでした。強めの運動、中等度の運動、別々に解析しても、統計的に有意な差は認められませんでした。
運動をすることによる健康への影響は、私たちが思うほど大きなものではないのかもしれません。高齢者に限りませんが、健康のために運動をするというよりは、生活の楽しみのために運動をすることが大切なのでしょう。
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