「医療安全」に沿ったきめ細やかな対応は、こうしたトラブルを起こさないようにするためのものでもあります。合併症を起こすリスクがあることは事前にきちんと説明し、医療者側にとっては想定内の状況だったとしても、「合併症が起こる可能性があることは、最初に話したじゃないですか」で済ませようとすれば、問題がさらにこじれてしまいます。
患者さんは常にさまざまな不安を抱えていることを念頭に置き、その都度その都度、局面に応じて、角度を変えた説明を行うことが重要です。たとえば、治療期間が当初より延びていることについて、なぜ延びているのか、どのような処置が行われているのか、どのくらいかかりそうなのか、といった部分にフォーカスして、じっくり説明を繰り返すのです。
少しでも早く回復して社会復帰を実現させる――。患者さんも医療者も、同じゴールを目指しています。しかし、患者さんが考えているゴールと、医療者側が考えているゴールがずれたときに問題が起こってしまいます。ずれているところはどこなのか。それをはっきりさせるのが、医療安全に沿ったきめ細やかな対応で、それが信頼関係を構築し、未然にトラブルを防止し、最終的な良い結果を導くことにつながるのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」