コロナ第2波に打ち勝つ最新知識

若い人は大量のウイルスに暴露しなければ症状は出にくいが…

コロナの治療にあたる医療スタッフ
コロナの治療にあたる医療スタッフ(C)新華社=共同

 米国疾病対策センター(CDC)の報告によると、新型コロナウイルスに感染した場合、潜伏期間は2週間以内で、平均5~6日である。症状は間質性肺炎から無症状までさまざまである。発熱を伴う肺炎患者の場合は、症状が出る4日前から発症後1週間程度が他の人に感染させるリスクがあるといわれている。

 感染様式は主に飛沫と接触だが、密閉状態での空気感染やエアロゾル感染も注意が必要だ。温度や湿度が高いと、活性は落ちる傾向にあるが、真夏も流行しているのでエアコンなどで気温や湿度を上げても排除できるわけではない。

 台湾の研究では、発症5日以内に接触した濃厚接触者1818例では新たな発症が1%だったのに対し、発症6日以降に接触した濃厚接触者852例では1例も認めなかったとされている。

 このように症状が軽くなってからの感染は少ないとされているが、皆無ではないので注意が必要だ。CDCは、無症状でも感染率は75%あるとしている。ちなみに、パキスタンの貧困地域などで集団免疫現象が起きているが、これは検査を受けられない無症状の若い人たちが軽い感染を広げている可能性が示唆されている。欧州の感染爆発も無症状者や軽症者からの感染拡散が要因のひとつであると考えられる。

 一方、当然のことながら、重症肺炎で大量のウイルスを排出させている人の感染力は強力である。欧米の病院では、重症患者の治療で大量のウイルスに暴露した若い医療従事者がかなり重症化している。

■体内で2カ月以上生存も

 ウイルスは細菌と違い、単独では生きられない。したがって、ウイルスの体内での生存期間についてもさまざまな議論がある。鼻咽喉のPCR検査では症状が出る約1週間前から、6週間後まで検出され得る。しかし、PCR検査でウイルスが検出されたからといって感染力があるというわけではない。

 一方、過去のSARSウイルスの研究では、環境が良ければ1カ月以上ほとんど感染力が落ちないというデータもある。ごく最近、新型コロナも紙幣や携帯電話の表面で28日間生きているという報告があった。もちろん体内では、さまざまな免疫防護機能が働き、貪食や殺菌、細胞性や液性免疫、免疫細胞の自爆攻撃などでウイルスを死滅排除させようとする。人間の体は“ウィズコロナ”を拒否しているのだが、生き延びたウイルスが脳、心臓血管など体のどこかに長期間残っていることが報告されている。

 発症後2週間以後もPCR検査で検出できる残存ウイルスはほとんど死骸であり、活性はないとの見方もある。しかし、一部の症例でこのウイルスが体内に1カ月から2カ月余り残り得ることは、われわれのグループの検査室での追跡や、各国からの研究報告から分かっている。再活性化への注意も必要だ。

 新型コロナウイルスは免疫細胞にも感染し、抵抗を避けながら慢性炎症を引き起こしている可能性がある。欧米での川崎病類似症例や日本での大動脈炎の症例が報告されたが、今まで原因が特定できなかった慢性の心臓血管病や脳神経病、慢性疲労症などにこの新型コロナや類似したウイルス感染が部分的に関わっている可能性は否定できない。

東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。

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