全国各地で発生しているクラスター(集団感染)。12日までに1601件にも上るという。介護施設などでの発生が報告されているが、気になるのがキャバクラ、スナックなどでのクラスター。何に注意すればいいのか?
飲食店では正面に座らないことが大切だとされ、横に座ることが勧められてきた。しかし、カウンターのような横並びでも人との距離が近い場合は感染リスクが高まることがわかってきた。弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長が言う。
「最近、新型コロナウイルスに関する科学的データが一斉に出てきたので、これまでの新型コロナ感染対策の常識を変える必要があります。例えばスーパーコンピューター富岳によるシミュレーションでは、横に座る危険が明らかになりました。飲食店でテーブルを4人で囲み、うち1人の感染者が、正面、はす向かい、隣の相席者に向かって1分間程度の会話をしたケースを想定し、座る場所によって届く飛沫の数の違いを調べたところ、飛沫量は、隣が正面に比べて5倍で、はす向かいは正面の4分の1程度に減ることがわかったのです」
国立感染症研究所が感染予防が徹底されていなかった4月ごろのレストランなどで発生したクラスター分析もそれを裏付けている。カウンター席では発症者の隣にいた友人がその後のPCR検査で陽性と出たという。
「ただし、同じ隣の席でも見知らぬ人で話をしていなければPCR検査が陰性だったことがわかっています。また、カウンター越しに料理を作っていた従業員は感染せず、カウンターの外で配膳をしていた従業員は感染したそうです」
つまり、発症者とは手に届きそうな距離にいて横でしゃべっている場合はリスクが高くなる。
食事中、お箸の共有はNG。大皿から料理を取るのもいけない。飛沫に含まれる大量のウイルスが付着してそれが口から侵入するからだ。
感染症は浴びるウイルス量により感染リスクが異なる。それを知るにはウイルスを吐き出す量と浴びる時間を知ることが大切だ。
富岳のシミュレーションによると、会話で1分間に約900個の飛沫、エアロゾル(直径が5マイクロメートル以下)が飛び、歌を歌うと1分間に約2500個の飛沫が飛ぶ。一方、強いせきを2回すると、合計で3万個ほどが飛ぶという。
「時間で言うと20分程度の会話で、せき1回と同じ程度の飛沫量が発生。歌っているときは会話と比較して数倍が、より遠くまで飛び、およそ5分歌うとせき1回分の飛沫が飛散することも富岳のシミュレーションで明らかになっています」
マスクも当初は、周囲に飛沫をまき散らさない効果はあっても、ウイルスから身を守ることは期待できないとされてきた。しかし、「富岳」のシミュレーションではマスクで体内に取り込む飛沫やエアロゾル量が3分の1まで減らされるという。
「東大医科学研究所教授の河岡先生も実際に新型コロナウイルスを使ってこのことを実証しています。ですから、夜のお酒の席でも飲食以外はできるだけマスクを着用することが大切なのです」