夫婦で生活習慣の改善に取り組むことは、長続きしやすい点も含めて、とてもおすすめです。
共に50代前半のAさんご夫婦は、お酒が大好き。お子さんがいないこともあり、夜は晩酌が欠かせません。
運動を日常的に行い、食事内容にも気を付けているため、アルコール摂取量は多いものの、健診で数値の異常を指摘されることはありませんでした。
しかし、「長くお酒やおいしいものを2人で食べたいから」と、お酒の量を少し減らすように決めたそうです。
土日は昼からワインを開けていたのを、スポーツジムへ夕方に行くようにして、夜までアルコールは飲まないようにする。平日夜は、日本酒からワイン、またはワインから日本酒というようにアルコールの種類を変えると飲酒量が増えるので、どちらか一方にする。
飲まないことが習慣化している人からすると、「大した変化じゃない」と思うかもしれません。でも、健診で数値の異常が出ていない現段階では、三日坊主にならない方法としてベター。長く続けられることが最も重要です。
■脂質異常症は2.58倍高く
夫婦は顔が似てくる、と言いますが、夫が生活習慣病の場合、妻も生活習慣病のリスクが高くなるという研究結果も報告されています。
研究を行ったのは、筑波大学医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野/ヘルスサービス開発研究センターの田宮菜奈子教授らです。2016年国民生活基礎調査のデータを2次利用し、40歳以上の夫婦8万6941組を対象に分析しました。
その結果、夫が高血圧、糖尿病、脂質異常症で治療を受けている場合、その妻は、夫がそれらの生活習慣病で治療を受けていない妻と比べて、同じ病気で治療を受けている割合が高いことが分かりました。さらに、夫婦の居住場所や経済状況、妻の年齢・学歴・飲酒・喫煙・ほかの疾患での治療の有無の影響を調整し、夫が高血圧、糖尿病、脂質異常症で治療を受けている場合の、妻が同じ病気で治療を受ける相対リスクを推定しました。
すると、夫が高血圧、糖尿病、脂質異常症で治療を受けている妻は、同じ病気で治療を受けるリスクが高血圧1.79倍、糖尿病1.45倍、脂質異常症2.58倍高くなることが明らかになりました。
父・母のどちらか、または両方が高血圧や糖尿病の場合、子供も高血圧や糖尿病になるリスクが高くなることは以前から指摘されています。脂質異常症にも遺伝的な要因で起こる家族性高コレステロール血症があります。
これらに加えて、チェックしたいのが「生活習慣病になりやすい生活」を親から受け継いでいないか。脂質、塩分、糖分多めのおかず、食後に果物や茶菓子を食べる習慣があるなど……。
夫婦の場合は遺伝的要因はないわけですが、同じ食事をし、寝起きを共にしているのですから、それが「生活習慣病になりやすい生活」であれば、2人とも同じ病気のリスクが高くなっても不思議ではありません。
「我が家の食事」が味付けが濃いめかどうか、何げにしている生活習慣(冒頭の夫婦であれば、食事で日本酒を飲んだ後は、ワインでビデオ観賞など)が生活習慣病を招きやすいものかどうか、一度夫婦で話し合ってみるといいかもしれません。
今後どういう人生を2人で歩んでいきたいのかを考え、そのために今日から始められることを挙げてみましょう。1人でやるよりも始めやすいはず。加えて、2人一緒に自治体で行う各種健診を受けるようにすれば、病気の早期発見・早期治療にも役立ちます。