1975年ごろ、「燃え尽き症候群」という言葉がはやったことがありました。この言葉を聞くのは、あの時以来のように思います。
あの頃、医師は患者に「がん」の病名は言わない、がんを隠すのが当たり前でした。
「あなたががんだなんて、そんな残酷なことをどうして言えようか」
「彼は死を自覚しないで亡くなったのがせめてもの慰めです」
患者に死を知らせない、死を告げない、それが患者への「最大の愛と思いやり」である――。そう、われわれは信じていた時代でした。
しかし患者は、医師には話さず看護師に訴えました。
「私はがんなんでしょう?」
「この赤い点滴は抗がん剤でしょ?」
「先生は大丈夫と言うけれど、私は知っているのよ。私はがんで死ぬんでしょう?」
がんと向き合い生きていく