がんと向き合い生きていく

「爪が黄色い」患者さんを検査すると肺に胸水が見つかった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「頚部とわきの下が黒くなった」

 そう訴える55歳の男性(会社員)が来院されました。痛みはないとのことですが、黒くなっているところの一部は線状になって色素沈着がありました。夏の間、特別に日焼けしたこともなく、何だろうと思って受診されたといいます。

 採血、尿の検査では問題ありません。しかし、胃内視鏡検査で進行した胃がんが見つかりました。まれな例ですが、この男性のように内臓の病気が皮膚に表れてくることがあり、「デルマドローム」と呼ばれています。

 食品売り場にさまざまな種類のミカンがたくさん並ぶ季節になりました。北国育ちの私は、冬になると毎年、こたつの中でミカンを一日何個も食べました。高校生の頃、ミカンの食べ過ぎで「体が黄色い」と指摘されたこともありました。黄疸ではないかとの心配もされましたが、黄疸の場合は目の結膜も黄色くなり、尿は黄色く、便は白くなります。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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