がんと向き合い生きていく

「爪が黄色い」患者さんを検査すると肺に胸水が見つかった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 ある外来診察での出来事です。「爪が黄色い」とのことで、皮膚科から60代の女性が紹介されてきました。皮膚や目の結膜は黄色ではなく、肝機能検査も問題なかったので黄疸ではありません。また、貧血もありませんでした。しかし、爪は黄色いのです。

 下肢に少しむくみがある程度で、ほかに体表には異常なし。3年ほど前に肺炎の既往があり、少し息切れがするとのことでしたが、酸素飽和度は96%とこちらも問題ありませんでした。

 聴診の後、胸部X線写真検査を行ったところ、左右の肺に胸水を認めました。特に右が多く、すぐに胸部CT検査となりました。結果は、肺線維症があり、肺結核、肺がんは否定的でした。がんによる胸水(がん性胸膜炎)ではありませんでした。

 結局、とてもまれな病気ですが「黄色爪症候群」と診断しました。原因はリンパ系のトラブルではないかと考えられていますが、胸水と黄色い爪の関係は分かっていません。それでも、胸水がコントロールされると黄色い爪の色は良くなるのです。この女性は定期的に呼吸器内科で診てもらうことにしました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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