独白 愉快な“病人”たち

「手遅れではない」の言葉で…笠井信輔さん悪性リンパ腫との闘い

笠井信輔さん(C)日刊ゲンダイ

「骨盤に影が見える。何かの病変かもしれないので、その先の検査をしたらどうか」

 すでにフリーになっていた私は、「徹底的に調べたい」と希望し、泌尿器科から血液腫瘍内科へ移りました。

 検査をすると異常が見つかり、骨髄を採る検査で「悪性リンパ腫」、つまり血液のがんということがわかりました。最終的な病名は「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」。その中でも遺伝子異常が認められるやっかいなタイプ。入院は最低4カ月で、仕事復帰までには1年かかるかもしれないと言われました。

 いろいろな意味でガクッときました。1年間も人前に出られないことの恐怖もそうですし、会社勤めならお給料がもらえたのに……という収入面での不安もありました。と同時に、「死ぬのかな」という思いが自分自身に大きくのしかかりました。さらに、検査が進むにつれてわかったのがステージ4という事実で、血液に乗って全身にがんが散らばっている状態であることを知りました。 でも、主治医の「手遅れではない。効きのいい薬はある。気落ちしなくていい」という言葉で気持ちを強くしました。というのも、私の主治医は患者さん以上に細胞と向き合っているような“学者先生”タイプの方なのです。正直で物事をシビアにジャッジする人なので、ただの慰めを言う人じゃない。その先生が「手遅れではない」と言うのだから、信じてみようと思ったのです。

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