病気を近づけない体のメンテナンス

髪<上>シャンプーが抜け毛や薄毛の原因になる可能性あり

念入りな洗髪はかえって逆効果になることも
念入りな洗髪はかえって逆効果になることも(C)日刊ゲンダイ

 髪は、体の司令塔である脳を暑さや寒さ、紫外線などの外的ダメージから守る役割をしている。また、体の中にたまった重金属などの有害物質を排出する器官でもある。とはいっても、機能よりも見た目の印象を決定づける部位というイメージが強いだろう。

 だからこそ「抜け毛」「薄毛」「パサつき」などの髪の変化は、誰もが気にするところだ。そうならないためにも「良かれ」と思って毎日、念入りに洗髪している人も多いはずだ。しかし、洗髪の仕方によっては、かえって逆効果になる場合がある。「白金ビューティフルエイジングクリニック」(東京都港区)の山口麻子院長が言う。

「ほとんどのシャンプーには、『合成界面活性剤』が大量に含まれています。それを毎日、何年も使い続けることが体質に合わない人が、大ざっぱに10人中、少なくとも3人程度はいます。そのような人は、気づかないうちに髪の成長が阻害され、抜け毛や薄毛の原因になっている可能性があるのです」

 界面活性剤とは、1つの分子内に油となじみやすい部分(親油性)と水となじみやすい部分(親水性)の2つの部分を併せ持つ物質の総称。本来、水と油のように混じり合わないものを混ぜ合わせる作用があり、汚れを落とす洗浄の働きをする。ほとんどの洗浄剤の主成分になっている。

 では、シャンプーが体質的に合わない人は、どのように髪の成長が阻害されるのか。髪が生えている毛穴の中には、「毛根」と皮脂を分泌している「皮脂腺」がある。シャンプーで頭の皮脂をすっかり洗い落としてしまうと、皮脂が不足してくる。そのため皮脂を大量につくって補わなくてはいけないので、皮脂腺が大きく発達してくるのだ。

 毛根は毛細血管から栄養をもらい、細胞分裂を繰り返すことで髪が太く長く成長していく。ところが皮脂腺が発達しすぎると、毛に供給されるはずの栄養の多くが皮脂腺に行ってしまい、毛が栄養不足の状態に陥ってしまうのだ。

「また、シャンプーのしすぎは頭皮を薄くします。それは合成界面活性剤が、頭皮のバリアー機能を形成している水溶性の天然保湿因子と油溶性の細胞間脂質のどちらも溶かしてしまうからです。バリアー機能が失われれば、水分がどんどん蒸発し、頭皮は乾燥します。すると、細胞が生まれる基底層での新陳代謝が衰えて、頭皮の厚みがしだいに失われて薄くなっていくのです。バリアー機能が再生するには、健康な皮膚で3~4日かかりますが、ほとんどの人は毎日シャンプーしているでしょう。頭皮は『畑』で、毛は『作物』にあたります。土が減って厚みがなくなれば、作物は十分に根を張ることができません。結果、薄毛を招くのです」

■「水洗髪」が望ましい

 さらに、シャンプーの合成界面活性剤には強い「細胞毒性」があることが、科学的に証明されているという。細胞毒性とは、細胞自体に直接ダメージを与えて死滅させたり、何らかの害を及ぼしたりする毒性のことだ。

 毛穴の中の皮脂腺の少し下にある「バルジ領域」という部分には「毛根幹細胞」が存在している。髪は毛母細胞が分裂してつくられるが、その毛母細胞をつくっているのがバルジ領域の毛根幹細胞だ。

 毛母細胞は頭皮から3~4ミリの最も深い場所にあるが、毛根幹細胞は1~2ミリの浅い場所にある。そのため、毛母細胞はシャンプーが直接つくことはないが、毛をつくるのに最も大切な毛根幹細胞は細胞毒性にダイレクトにさらされてしまう。

 人間の皮膚には再生力があるので、細胞毒性にさらされて傷ついても、いずれ回復する。しかし、毎日、何十年も毛穴にすり込んでいれば、毛の発育が阻害されても不思議ではないという。

 このように体質的に合わない人がシャンプーを使うことのリスクを考えれば、いくら育毛剤などを使っていても、その効果は相殺されてしまう。そこで抜け毛や薄毛を気にしている人に、山口院長が勧めるのは「脱シャンプー」。つまり「水洗髪」に変えること。洗う水の温度は皮脂を落としすぎない常温以下にするのが理想という。

「そうはいっても、急に水洗髪にするのは難しいので、シャンプーをする日を少しずつ減らすのがいいでしょう。最初はシャンプーを2~3日に1回にして、あとはお湯で洗髪する。慣れてきたらシャンプーを週1回に。しばらくしたらシャンプーはやめて、お湯の洗髪だけにする。その後に水洗髪に切り替えるといいでしょう」

 シャンプーを減らしていき、皮脂腺が縮んで皮脂の分泌量が減ってくれば、シャンプーを使わなくても髪のニオイやベタつきはなくなるという。

関連記事