高齢の方が転倒すると、ケガをするだけでなく骨折してしまうこともあります。骨折部位にもよりますが、足の付け根部分を骨折すると、寝たきりになってしまうこともあり、特に骨粗しょう症を患っている方では、転倒に注意が必要です。
転倒を予防するためには、転倒を起こしやすい環境の改善に加え、平衡感覚、歩行機能など、身体能力の維持が大切です。そのため、適度な運動が転倒の予防に有効だと考えられています。
とはいえ、運動を継続的に続けることは、なかなか容易ではありません。楽しみながら体を動かすことができれば何よりですが、ダンスをすることで転倒を予防できるかどうかを検討した研究論文が、米国医師会が発行しているオープンアクセスジャーナル誌の2020年9月号に掲載されました。
この研究は、18年2月18日までに報告された、高齢者(平均65歳以上)を対象に、ダンスをベースとした運動の転倒予防に対する効果を検討した研究データ29件を解析(メタ分析)したものです。ダンスをベースとした運動とは、音楽や呼吸などのリズムに合わせて立位で行うもので、社会的交流が経験できる活動と定義されています。
解析の結果、ダンスをベースとした運動をした場合、しない場合と比較して、転倒のリスクが37%、統計的にも有意に低下しました。さらに、ダンスをベースとした運動はバランス感覚など身体機能の改善にも関連していることが示されました。
この解析に含まれた研究参加者の多くが女性であったため、男性でも同様の効果が期待できるかは分かりません。ただ、ダンスのように他者と会話をしながら運動をすることは、転倒予防に対する効果的な方法のひとつと言えるかもしれません。
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