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しゃっくりが止まらない…何かの病気のサインでしょうか?

脳神経外科医の鮫島哲朗氏
脳神経外科医の鮫島哲朗氏(提供写真)

 しゃっくりは、胸部と腹部の仕切りである横隔膜がけいれんすることで発症します。特別な理由がないこともありますが一般的にはアルコールを一気飲みしたり、冷たいもの、熱いものを一気に食べたときの刺激によって起こります。通常は数分から長くても1、2日で収まりますが、1週間以上も続くようなら病院にかかりましょう。

 重大な病気が隠れているかもしれません。

 この重大な病気とは、消化管や肺、気管支、胸膜の病気である可能性もありますが、脳神経外科医として忠告したいのは脳腫瘍の症状としてしゃっくりだけが表れる患者さんがいるということです。これは脳幹にある脳神経を刺激しているためと考えられます。

 実際、しゃっくりが初発症状だった2人の脳腫瘍の患者さんを先月手術しました。いずれも長期間しゃっくりが止まらずに精査を行ったところ脳腫瘍が発覚。

 1人目は30代男性で、1年半ほどしゃっくりが止まらず、いろんな病院にかかっても原因が分かりませんでした。精神安定剤を処方されて症状を少し抑えていたのですが、次第に仕事上のミスが増えるといった支障が出始めて、頭部のMRI検査で巨大な脳腫瘍が分かったのです。手術後はあれほど苦しんでいたしゃっくりも完全に止まっています。

 もう1人は5歳の男児です。ご両親が「3カ月ほどしゃっくりが出たり収まったりを繰り返している」と近くのクリニックを受診されましたが、原因が分からず、経過観察となっていました。男児の場合は、就寝中もしゃっくりが出ており、次第に食欲低下、嘔吐、ふらつき、斜視などの症状が見られたので、そこで初めて脳の異常を疑われ、頭部MRI検査を行ったところ脳幹腫瘍と診断されました。

 また、脳出血や脳梗塞といった脳卒中が原因でしゃっくりが出ることもありますが、同時に手足のしびれ、頭痛、めまい、言語障害なども発症することがあるため、診断は比較的早くつくことが多いです。

 最後に、一般的なしゃっくりを止めるにはどうしたらいいか。両耳の穴に指を入れて塞ぎ強く押す、お腹(横隔膜のある付近)を温める、鼻をつまむ、水を飲む、舌を引っ張る――。昔から言い伝えられている方法はすべて利にかなっています。

 それでも、自然に止まらなければ病院で安定剤などを処方してもらいます。「しゃっくりが100回続いたら死ぬ」というのは迷信ですが、長時間継続するようであれば、やはり検査をしてほしいと思います。

▽鮫島哲朗(さめしま・てつろう)宮崎県出身。1990年3月宮崎医科大学(現宮崎大学)医学部卒業後、同脳神経外科入局。2002年4月に米国Duke大学脳神経外科、10年2月にNTT東日本関東病院脳神経外科主任医長を務め、13年4月から浜松医科大学脳神経外科勤務。さまざまな医療現場で活躍するスーパードクターたちが出演の公式YouTubeチャンネル「「SuperDoctors -名医のいる相談室-」」にて解説します。

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