コロナ第3波に備える最新知識

再感染しやすい?変異した新型コロナウイルスが見つかった

ワクチン開発は進むが…
ワクチン開発は進むが…(C)ロイター/Latin America News Agency

 新型コロナウイルスの急激な感染拡大で日本列島は大揺れだ。14日には新型コロナの国内感染者が新たに1737人確認された。1日当たりでは最多の新規感染者数だ。一般的に気温16度以下、湿度40%以下になるとウイルスの活動は活発になるという。これからは今まで以上の警戒が必要で、感染拡大の防止は難しくなってくる。そんな中、気になる情報が飛び込んできた。欧州では新型コロナに新たな変異が生じて再感染しやすくなったのではないか、というのだ。英国グラスゴー大学を中心とした国際研究チームが、査読前の論文投稿サイトに報告した。東海大学医学部分子生命科学講師の中川草氏に話を聞いた。

「新型コロナウイルスが人間の細胞に感染するには、ウイルスが持つ鍵と細胞の鍵穴がぴったりとはまる必要があります。鍵にあたるのがウイルス表面にある突起状の『Sタンパク質』で、鍵穴にあたるのが人間の細胞表面にある『ACE2受容体』です。今回、変異が疑われているのはこのウイルスのSタンパク質の439番のアミノ酸の変異です。この変異により、今までの新型コロナウイルスで作られた抗体が、変異したウイルスで効かなくなる可能性があることが示唆されました」

 新型コロナウイルスに一度感染すると生体内の免疫系が働き、ウイルスに対する特異的な抗体を産出できる細胞が増加して、抗体によってウイルスの感染・増殖を抑える。このように新型コロナウイルスに対する免疫を獲得した場合、新型コロナウイルスに再度感染しても対する抗体がすぐに産出されるのでウイルスは増殖ができず、症状が重くなることは少ない。しかし、この変異した新型コロナウイルスはその抗体が効果を示さない可能性がある。そのため、一度新型コロナウイルスに感染した患者が、再度感染して症状が悪化してしまう可能性があるのだ。

「この変異は少なくとも独立に2回、欧州で発生していることが報告されました。この変異ウイルスは、それぞれ500回以上確認されていて、増殖効率に関しては今までの新型コロナウイルスとあまり変わらない、別な報告では少し劣るかもしれないともいわれています」

■ワクチンや血漿療法から逃れられるようになった可能性も

 現在開発中のワクチンや、感染して回復した患者の血液を注入して抗体を作る血漿療法も、変異した新型コロナウイルスに対して効きづらくなる可能性が高い。

「ウイルスの一部が変わるだけなので、基本的な点では同じです。ですから、変異したとはいえ、ワクチンがまったく効かなくなることはないでしょう。ただし、予想よりも効果は薄れるかもしれません」

 このような免疫から逃れるような変異が生じるのは新型コロナウイルスに限らず、ウイルス一般にあることだ。したがって、今後も新たな変異が生じて免疫系から逃れるような変異体が出現し、広がる可能性は否定できない。冬に向かい気温と湿度が低下すると、新型コロナウイルスの感染はさらに広がる。このような変異体が生じる可能性はウイルス感染者数に応じて増えるので、やはり感染者数そのものを抑えることが回り道のようではあるがウイルスの制御のためには重要だろう。

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