手術室に行き、手洗いをして、手術着に着替えました。患者は右の頬が大きく腫れた70代の男性で、手術は「上顎洞がん摘出術」でした。上唇の中央部から鼻翼の右側、右目の下まで縦に切開し、皮膚をはがし、大きな腫瘤を摘出するのです。右上顎から鼻腔、頬骨も切って上顎洞、ほとんど顔の右側半分を切除しました。
手術中の教授の迫力は凄まじいものでした。
「ん! そこ!」と太い声で指示を出し、助手を務める医師が「は! はい!」と答えながら進行していきます。教授は時々、鋭い目で私の方を睨みます。私はずっと緊張して見ていました。
大きな塊を取り切った後、今度は皮膚を縫い戻します。もう手術の終わりが近づいていました。ところがここまできて、教授は皮膚が合わなくなっていることに気づいたようでした。大きな塊がなくなったため皮膚が余ってしまったのです。
がんと向き合い生きていく