コロナ第3波に備える最新知識

ウイルス感染予防ではなぜ「乾燥」を避けることが重要なのか

冬は乾燥で喉を痛めないように…
冬は乾燥で喉を痛めないように…(C)日刊ゲンダイ

 空気が乾燥する冬はウイルスに感染しやすくなるといわれている。たしかに、インフルエンザや風邪は冬場に流行のピークを迎えるし、感染者が再び急増している新型コロナウイルスも、まずは北海道で感染が拡大した。そのため、これから全国的に冬本番を迎えると、さらに感染が広がる可能性が指摘されている。

 なぜ、乾燥するとウイルスに感染しやすくなるのか。東京医科歯科大名誉教授の藤田紘一郎氏(感染免疫学)は言う。

「ウイルスは宿主の細胞内でなければ増殖も生存もできませんが、生体外でも一定期間は生き続けます。一般的にウイルスの多くは、気温と湿度が低く乾燥している環境で生存率が高まるのです。1961年に発表された温度・湿度とインフルエンザウイルスの寿命の関係を調べた研究があります。温度7~8度、湿度20~25%の環境では6時間後の生存率が63%でしたが、湿度49~51%では生存率42%、湿度81~82%では35%に低下しました。さらに温度が32度の場合、湿度が49~51%以上の環境では生存率がほぼ0%でした」

 湿度が低い環境はウイルスの生存率が高まるだけでなく、感染力もアップする。

 人体と同じように、ウイルスにも水分が含まれている。湿度が高い環境では、ウイルスが空気中の水分を取り込んで重くなるため、長時間にわたって空気中を漂うことができなくなる。感染者が咳やくしゃみをしたときも、遠くまで飛散することなくすぐに地面に落下して感染力が失われる。

「反対に湿度が低く乾燥した環境では、ウイルスに含まれる水分が蒸発して軽くなるため、長時間浮遊しやすくなります。その分、口や鼻から侵入する可能性が高くなり、感染力が強くなるのです」(藤田氏)

 新型コロナウイルスはまだわかっていない点も多いが、これまでに気温や湿度との関係について調べた研究がいくつか報告されている。米国メリーランド大のグループが、世界の50都市を対象に気温・湿度と新型コロナウイルスの流行の関係を分析したところ、平均気温が5~11度で湿度が低い地域に感染者が多く集中していたという。

 別の研究では、気温と湿度が低いという要因だけで感染の広がりをすべて説明できるわけではないとしているが、やはり乾燥はしっかり対策したほうがよさそうだ。

■気道の防御機能にもマイナス

 ウイルスの宿主となるわれわれの側も、乾燥した環境では感染しやすい状態を招いてしまう。

 ウイルスは、われわれの口や鼻から入り込んで気道の粘膜に付着することで感染する。しかし、気道にはウイルスに対する防御機能がある。気道の内膜を覆う粘膜でウイルスをとらえ、繊毛の働きで咳や痰として体外に排出する。

「繊毛は乾燥に弱く、空気が乾燥する冬になると動きが鈍くなり、ウイルスを排出する働きも弱くなってしまいます。また、空気が乾燥すると喉に炎症を起こしやすくなり、ウイルスが侵入しやすくなってしまいます」(藤田氏)

 ウイルス側から見ても人間側から見ても、感染予防のためには乾燥対策が重要なのだ。

 暖房機器を使っていると、室内はますます乾燥しやすくなる。加湿器と換気を併用し、湿度50~60%を維持したい。また、濡らしたタオルや洗濯物を部屋の中に干すのも乾燥防止効果がある。手洗い、マスク、3密回避に加え、冬は乾燥を避けたい。

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