もう一つのコロナワクチン ウイルスベクターの期待と課題

世界各国で治験が行われている(C)ロイター

■日本でも治験が実施されている

 アストラゼネカのワクチンでは、チンパンジーから取り出して弱毒化させたチンパンジーアデノウイルスに、スパイクタンパク質の遺伝子を組み込んでいる。

「ウイルスを運搬役として使うのは、スパイクタンパク質を作り出す遺伝子を、ターゲットにしている細胞内まで効率的に到達させるためです。弱毒化していてもアデノウイルスには細胞内に侵入して感染する力があります。細胞の中まで遺伝子を運ぶ最適な運搬役といっていいでしょう。また、ウイルスを使うワクチンは、mRNAワクチンに比べてたくさんの抗原が作られるため、抗体ができやすいといわれています。その分、より強い感染予防効果が期待できます」(神崎氏)

 とはいえ、まだまだ課題が残っている。運搬役のアデノウイルス自体に毒性があり、弱毒化したとしても発熱などの風邪症状を引き起こすケースが報告されている。また、すでに製品化されているアデノウイルスベクターの遺伝子治療薬では、副作用の肝機能障害による死亡例もある。

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