医者も知らない医学の新常識

コロナ禍の影響は? 1カ月のがん手術延期で100人中1人が死亡

新型コロナの影響で手術が中止や延期に

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大が止まりません。軽症者の多いこの病気ですが、入院患者が増えて医療が逼迫すると、いろいろな影響が出てくる可能性があります。

 病院で院内感染が起こると、病棟を閉鎖したり、スタッフが休んだりしないといけなくなって、予定されていた外科手術なども中止や延期になってしまいます。

 実際に今年の夏に腎臓のがんの手術を予定されていたクリニックの患者さんは、病院で院内感染が起こったために2カ月の手術延期となってしまいました。その患者さんのがんはそれほど悪性度の高いものではなく、転移などもなかったので大きな問題にはなりませんでしたが、もし進行の速いものであったら、手術が延期されることで、取り返しのつかない結果になってしまう可能性もあります。

 今年の「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」という一流の医学誌に、こうした問題を解析した論文が掲載されました。これまでの臨床データをまとめて解析したところ、多くのがんにおいて、当初の予定より手術が1カ月延期されると、患者さんの死亡リスクが増加することが確認されました。たとえば悪性度の高い乳がんでは、1カ月の延期により100人に1人がそのために死亡する、と計算されたのです。

 新型コロナウイルス感染症の怖さは、こうした意外なところにも潜んでいるのです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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