もちろん、そうした新たな病気が表れないように1次予防を徹底することがまずは大切なのですが、それでも出てきてしまったときは、医師には前向きな取り組みが求められます。いまの新型コロナウイルス感染症もそのひとつといえます。コロナウイルスそのものは、いままでも存在していたウイルスで、いくつもあるコロナウイルスによる感染症も経験しています。しかし、今回の新型コロナウイルスは感染力が高く、致死的な肺炎を起こす可能性があるウイルスでした。それを制御できずに世界中で蔓延して、人々の日常生活を大きく変えてしまった。それくらい影響力の強い新しい病気が、ある日いきなり飛び出してくる可能性が外科の領域でも十分にありえるのです。
ほかにも、手術によって患者さんを「若返らせる」方法があるかもしれません。われわれは年齢を重ねていくと臓器も年を取っていきます。しかし心臓は、筋肉そのものの衰えはあるにしても、いまの日本人の平均寿命よりも長く働けるだけのポテンシャルがあります。そんなポテンシャルをしっかり発揮できるような環境を手術でつくってあげれば、心臓とともに全体を若返らせることが可能になるかもしれないのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」