上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

若手医師が目指して進む「新しい医療」はたくさんある

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 もちろん、そうした新たな病気が表れないように1次予防を徹底することがまずは大切なのですが、それでも出てきてしまったときは、医師には前向きな取り組みが求められます。いまの新型コロナウイルス感染症もそのひとつといえます。コロナウイルスそのものは、いままでも存在していたウイルスで、いくつもあるコロナウイルスによる感染症も経験しています。しかし、今回の新型コロナウイルスは感染力が高く、致死的な肺炎を起こす可能性があるウイルスでした。それを制御できずに世界中で蔓延して、人々の日常生活を大きく変えてしまった。それくらい影響力の強い新しい病気が、ある日いきなり飛び出してくる可能性が外科の領域でも十分にありえるのです。

 ほかにも、手術によって患者さんを「若返らせる」方法があるかもしれません。われわれは年齢を重ねていくと臓器も年を取っていきます。しかし心臓は、筋肉そのものの衰えはあるにしても、いまの日本人の平均寿命よりも長く働けるだけのポテンシャルがあります。そんなポテンシャルをしっかり発揮できるような環境を手術でつくってあげれば、心臓とともに全体を若返らせることが可能になるかもしれないのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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