上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

若手医師が目指して進む「新しい医療」はたくさんある

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 たとえば、iPS細胞をシート状にして手術で心臓の表面に貼り、心筋を再生させる再生医療は、まったく新しいジャンルの治療法といえます。30年前にはとても考えられなかったような治療が、現実になりつつあります。たくさんの人たちの発想が現実になり、現実になったら次は確実性を高めていく。さらに、それが広く患者さんに使えるようになるまでの期間を短縮させる。これは次代を担う医師たちがやるべき仕事です。もしも動脈硬化を抑制する細胞が見つかれば、それを手術中に血管に植えることで動脈硬化を改善させる新たな治療が登場するかもしれません。

 われわれの世代は、こうした未来の医療のビジョンをマンガやアニメ、小説の中で垣間見て、それを現実と照らし合わせ、「まだそこまでは進んでいないな」「これは実現したぞ」といった確認をしながら進んできました。しかし、いまはそうしたビジョンを若手医師やこれから医師を目指そうという人たちに具体的に見せられていないのが現状です。これは、医療界全体の責任といえるかもしれません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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