コロナ第3波に備える最新知識

入院患者は他人に感染させる能力を持っているとは限らない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 寒くなれば新型コロナウイルスの感染者数はもちろん、重症・死者数が増えることは誰もが予想したこと。そのために、国を挙げて病床確保に動いてきたはずなのに、冬の入り口の段階で「医療崩壊しかねない」と大騒ぎするのはどうしたことか?

 東京都は、今月19日になって重症用の病床を150床から300床に増やすと言いだした。しかし、5月の時点で400床が確保されていた。当局の甘い予測が重症用病床不足の原因なのは明らかだ。

 ならば、また依頼して元に戻せばいいと思われるかもしれないが、一般病床に戻されたベッドは他の病気の患者がいる。しかも、病院のワンフロアを丸々、重症病床に戻すとなると、リスクも大きく、収入的にも見合わない。

 第一、スタッフが集まらない。緊張感が続く仕事に見合った収入が得られない、感染症に詳しくないなど理由はさまざまだが、「コロナいじめ」に代表されるように、新型コロナに関わる仕事をすると「感染リスクが高い」と思われてしまうことも大きい。京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授が言う。

「ウイルス感染者=感染能力者ではありません。また、新型コロナで入院した人は感染力が強く、重症者はさらに強力というものでもありません。疫学データからは、感染能力があるのは発症2日前から発症後1週間程度です。新型コロナで亡くなるのは、ウイルスに過剰反応した免疫組織が暴走したり、血栓ができるからです。重症者が、他人にうつすほどのウイルス量を維持し、排出しているかどうかはわかりません」

 新型コロナで亡くなった人が、ウイルスの毒性で亡くなったのであれば遺体は究極の毒物であるはずだ。しかし、国の「新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方及びその疑いがある方の処置、搬送、葬儀、火葬等に関するガイドライン」(2020年7月29日)では「感染リスクは低い」としている。

「仮に重症の患者さんのウイルス量が多いとしても、それだけで感染力が決まるわけではありません。それには飛沫を飛ばす能力が維持され、排出されるウイルスが感染性を持つ正常なウイルスでなくてはいけない。しかし、ウイルスには完全と不完全なものがあり、不完全なものは感染力がないばかりか、完全なウイルスが増殖するのを邪魔します。PCR試験では完全ウイルスだけではなく、不完全ウイルスも増幅されます。感染性はPCR試験では判別できません」

 不完全ウイルスは1980年代ごろから研究されているという。

「不完全ウイルスは正常な完全ウイルスの活動を抑制しますが、それが病態に関わっていることもあります。例えば麻疹ウイルスでは不完全ウイルスが体内でできて、脳できわめてゆっくりと増殖し、致死性の脳炎を引き起こすことも知られています。ただし、不完全ウイルスは他者にうつる能力は失われています」

 ただ「怖いぞ」と脅すばかりで、予想された患者増のための病床を準備せず、PCR試験の結果の意義やコロナウイルスの性質を正しく理解させる努力を怠った結果がいまの大騒ぎではないのか。

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