新型コロナは室内が危ない 冬こそ空気マネジメントが必要だ

今年は冬も活躍
今年は冬も活躍

 多くの日本人は手洗い・マスクをしっかりして人混みを避け、小声で会話する生活を続けている。秋口まではそれで新型コロナウイルスの感染を抑えられてきたのに、冬になった途端、感染者が急増している。新型コロナウイルス感染症が街中の飲食店などから家庭に迫るなか、どうしたらいいのか? 東邦大学医学部名誉教授の東丸貴信医師に聞いた。

 新型コロナウイルスは会話、くしゃみ、咳をしたときの飛沫によって広がる。ただし夏は湿度が高く、大きな飛沫はすぐそばに落ち、煙のように細かい粒子であるエアロゾルが発生しても空気中に漂う時間も短い。気温が高いためウイルスが感染力を維持したまま長時間生存することもない。

「冬になるとそうはいきません。空気が乾燥することで水分を失ったエアロゾルはより細かい粒子となって長時間空気中を漂う。人はそれを鼻や肺の奥にまで吸い込みやすくなります。テーブルや食器などに落ちた飛沫の感染力も高くなりますが、徹底した清掃である程度対応はできるかもしれません。しかしエアロゾルの対策は簡単ではありません。そのことが冬の感染拡大の一因だと考えられます」

 エアロゾルによる感染の確率が高く、いかにその予防が難しいかは、新型コロナのクラスターのほぼすべてが室内で発生していることから推測できる。そのことはWHO(世界保健機関)や米国疾病対策センター(CDC)、厚労省なども警告しているのだが、一般に十分認識されているとはいえない。

 その結果、商店や飲食店などでは安全に見えても実はエアロゾルを防ぐ効果が薄いとされるフェースシールドの着用やアクリル板設置で感染対策が終わったような気になってしまう。

「こうした対策は多少の効果はあるかもしれませんが、冬はエアロゾル感染を強く意識した対策を取らなければなりません。家の外でマスクを正しくつけて、大人数で集まらない、大声で会話しないことはもちろんですが、それだけで十分とはいえません。いま考えるべきはエアロゾル感染から身を守るために、自宅を含めた室内の空気をどう管理するかです」

 その一番の手段は換気だ。室内に漂うエアロゾルを屋外に追い出さなければならない。換気は1時間に2回以上の頻度で行うのが望ましい。

「理由は換気回数が2回以下になったとき、結核とはしかの拡散に有意な関連があったとWHOやCDCが報告しているからです。日本でも中学校の結核の集団感染が起きたとき、換気が1・6~1・8回と少なかった。新型コロナのクラスター発生施設の換気回数の報告はあまりありませんが、中国・広州のレストランの調査では0・56~0・77回と極端に少なかったといわれています」

■加湿器や空気清浄機も使いたい

 ならば、1時間に2回、窓やドアを開けっぱなしにすればいい、と考える人もいるかもしれない。しかし、それはやめた方がいい。冬は室温や湿度の管理も重要で、WHOは室温の下限を18度、湿度40%以上に設定するのが良いとしている。

「その理由は低室温が呼吸器疾患や循環器系疾患の罹患率の上昇に関与していることが多数報告されているからです。英国の慢性肺疾患の患者において寝室の室温が少なくとも9時間、18度が維持された場合、肺機能の向上が見られたと報告されています。就寝中も室温18度は大切です。また、インフルエンザの不活性化率が高い相対湿度は40~60%であるとされていることから、室温は18度、湿度は40%を下限とすることが良いのです」

 窓の全開放は一時的とはいえ室温や湿度を大幅に下げる。そうならないように常時窓を少し開けて徐々に換気しつつ、暖房器具を稼働させ室温を保つことが大切だ。

「湿度を適切な値に維持するための加湿器も、もちろん有効です」

 換気は部屋の対角線上にある窓やドアを開けた方が空気の流れができて効率的だ。換気扇が汚れていたり、家具で室内の給気口がふさがらないように注意したい。

「温かい空気は部屋の上に、冷たい空気は下にたまります。扇風機を斜め上に向けて空気を拡散するのも良いでしょう」

 では、窓のない部屋ではどうすればいいのか?

「市販の空気清浄機を使うことです。米国環境保護庁並びに米国、欧州の空調関係の学会は外気取り入れを推奨しつつ、HEPAフィルター付きの空気清浄機を換気の補助に使うことを推奨しています。厚労省も、データの蓄積が必要としつつも、HEPAフィルター付きの空気清浄機がウイルスを低減させる効果があることは明らか、としています。外気取り入れの方向と空気清浄機の風向きを一致させて使いましょう」

 なお、人がいない部屋の窓を開け、廊下を経由して、少し温まった状態の空気を人のいる部屋に取り入れることも、室温を保つには有効だ。

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