在宅で療養するサービスとして、定期的に医師が訪問する「訪問診療」、医師の指示で看護師が訪問し看護する「訪問看護」、ホームヘルパーが生活をサポートする「訪問介護」などがあります。
たくさんの職種が関わるので、「病院に入院して治療を受けるより在宅医療の方が値段が高いのでは」と考える人もいるでしょう。
しかし一般的に、病院に入院した場合より高いということはありません。
使える保険には、医療保険と介護保険があります。医療保険はご存じの通り、治療費の一部をカバーしてくれるもので、日本では国民全員が何らかの公的医療保険に加入しています。
これに対し介護保険は、加入対象が65歳以上の第1号被保険者と40歳以上65歳未満の第2号被保険者になります。
通院せずに自宅で療養しながら介護サービスを受ける場合、患者が第1号被保険者だと、介護保険によって介護ベッドや歩行時の補助具などを安く借りられたり、買い物に行く時にヘルパーさんに付き添ってもらえるなど、在宅で過ごす上での生活支援が受けられます。
一方、40歳以上65歳未満の第2号被保険者では、あらかじめ指定されたがんの末期や関節リウマチなど、「加齢に起因するような特別な病気で支援や介護が必要」と判断された時以外は、介護保険が適用されません。
また同じ65歳以上であっても、年金など収入の違いで、負担の内容が変わってきます。また収入によって1カ月の医療費の上限があり、その上限額以上を支払う必要はありません。たとえば75歳以上の住民税非課税世帯ですと、1カ月当たりどんな治療を受けようと8000円が上限となり、在宅医療を一層受けやすくなるケースもあります。
ちなみに訪問看護についてですが、医療保険と介護保険の両方を使える患者さんでは原則、介護保険が優先されます。
ただし、がんの末期などあらかじめ国で指定している特別な病状に合致していれば、医師が訪問看護特別指示を出して医療保険を適用させることもあります。そうなると、1カ月にかかる費用はぐっと抑えられます。
医療保険、介護保険の上限額は収入や年齢で異なりますが、例えば上限がそれぞれ8000円の人であれば、看護師やホームヘルパーが毎日来て、点滴や介護を受け、濃厚な在宅医療行為を受けても、1カ月の費用は1万6000円となります。
では、介護保険が受けられず、3割負担の医療保険のみの人は?
たとえばがんの末期では月3万円前後、点滴のポンプやいろいろな機械を導入すると月7万~8万円前後。高額だと思いますか?
しかしこれでも入院時の費用と変わらないか、低いくらい。人生の最期の時間を自宅で思うように過ごせるわけです。その価値は計り知れませんし、むしろリーズナブルではないでしょうか。
最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと