病気を近づけない体のメンテナンス

唾液腺<上>歯科医が指南 唾液分泌を促進させる水分補給法

お茶でなく水が良い
お茶でなく水が良い(C)日刊ゲンダイ

 健康な人の口内には、1日に1~1・5リットル程度の唾液が「唾液腺」から分泌されている。唾液の成分は「水」「電解質」「粘液」「多くの酵素」からなり、人体の最初の関門である口の中で、さまざまな重要な役割を果たしている。

 たとえば、会話や飲み込みのための潤滑油、味覚を感じるための溶媒、清潔を保つ自浄作用、病原菌に対する抗菌作用、口内のpH環境を中性に保つ緩衝作用、でんぷんを分解する消化作用、有害物質を希釈・解毒して吐き出す作用などだ。

「イーブレスクリニック心斎橋」(大阪市)の本田俊一院長(歯科医師)が言う。

「口内の粘膜や歯の表面には、通常は無害な常在菌がじゅうたんのようにすみ着いて、外から入ってくる有害な菌がすみ着かないようにして身を守っています。唾液は歯や粘膜を保護するとともに、これらの菌や外部から侵入した菌を洗い流し、胃に送って殺菌しています。ですから、唾液の質が低下したり、唾液の流れが悪くなると、一気に口の中の細菌環境が悪化します。その結果、不快な口臭や味覚異常が引き起こされたり、虫歯や歯周病が誘発されたりします。唾液の免疫力や緩衝力を維持したり、常に唾液を出し、流れを良くしておくことは虫歯や歯周病の予防だけでなく、体の病気の予防としても不可欠なことなのです」

 唾液には「ネバネバ唾液」と「サラサラ唾液」がある。唾液の分泌は、自分の意思とは関係なく自律神経によって自動的に調節され、この2種類の唾液のバランスにより、健全な口内環境が維持されている。非常にリラックスしているときは副交感神経が優位に働き、サラサラ唾液が分泌され、会話や食事がスムーズに楽しめる。

 ところが、心身にストレスを感じていると、交感神経が優位に働き、サラサラ唾液の分泌が低下する。同時に舌の動きも悪くなり、不快感を覚えるようになるのだ。この状態だと体の免疫力も低下していく。

「口の中がネバネバしてきたときは要注意です。体の危険信号と考えていいでしょう。このようにバランスが崩れると、ネバネバ唾液が多くなる。ネバネバ唾液には『ムチン』というネバネバした成分が含まれており、ムチンには口の中の菌を固まらせ、吐き出させる役割があります。サラサラとした唾液の流れが阻害されると、口内の細菌環境が悪くなるので、このような防衛機能が働くと考えられます」

 一日中、口の中がネバネバしているのは、精神的な不安が持続して安静時の唾液の流れが不足していることが考えられる。

 そのようなときに「お茶」を常飲している人も多いと思うが、それは逆効果。ウーロン茶や緑茶などのお茶にはポリフェノールによる口臭抑制効果と、緊張を緩和するリラックス効果があり、一時的には非常に良い効果を発揮する。

 しかし、いつも口の中がネバつくような慢性的に「安静時唾液流量」が不足している人には、お茶の常飲は勧められない。お茶にはカフェインやテオフィリンが含まれるため利尿作用が高く、尿量が増えて体内の水分が排出されるため、常に口の中が乾く状態になるからだ。また、お茶に含まれるポリフェノールには、唾液の分泌を抑制する作用があるという。十分な唾液量を確保するためには水分補給が欠かせないが、やはり水分補給には「水」がベスト。本田院長が勧める唾液分泌を促進させる主なポイントは次の3つだ。

①水分補給量は最低限1日1・2リットル

②1回量は200㏄程度③飲むタイミング

「朝、起床した直後に歯磨きを済ませたら、まず水を200㏄飲みましょう。それによって唾液分泌が促進され、朝食をスムーズに取ることができます。その後は食事と食事の間の空腹時に飲む。水分補給に適した飲み物としては、水、もしくは砂糖や炭酸を含まないスポーツドリンクをお勧めします」

 時間を決めて定期的に水分補給をするタイミングは次の通りだ。

●朝起きて歯磨きの後

●午前10時ごろ(朝食と昼食の間)

●午後3時ごろ(昼食と夕食の間)

●午後9時ごろ(夕食と就寝時の間)

 飲む量は200㏄(コップ1杯)が目安だ。

 適切に水分補給を行うと唾液の分泌が増えるだけでなく、「自律神経が調節される」「腸管活動が活発化する」「むくみが解消される」などの効果も期待できるという。

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