コロナ第3波に備える最新知識

冬のマスク過信は禁物 元気なウイルスが多く漂う

飲食店での会食はマスクをしていてもクラスターリスクは高い
飲食店での会食はマスクをしていてもクラスターリスクは高い(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルスの感染予防に「不思議な成功」をしてきた日本。冬に入り急拡大しているのはなぜか? 東邦大学医学部名誉教授で循環器疾患が専門の東丸貴信医師に話を聞いた。

「マスクへの過信もその一因かもしれません。これまでの研究からマスクはウイルス飛沫の8割、エアロゾルの半分は防げるといわれていますが、ウイルスの侵入を完全に防げるわけではありません。マスクと顔の間に隙間ができますし、飛沫核はマスクの網目から楽々と通ってしまう。冬は空気中に漂うウイルスが元気で量も多く、感染力も強い。そのためマスクが感染防護に万全でないことをもう一度思い起こしておく必要があります」

 新型に限らずコロナウイルスは気温が下がる冬に活動が活発になり生存力が増す。しかも冬の乾燥した環境では飛沫の水分が蒸発するためにウイルスは飛沫核の上で空気中に長く漂う。湿気が多く、飛沫が身近なところで落ちてウイルスが短期間で死ぬ夏とは異なり、冬は空気中に漂う元気なウイルスが断然多いのだ。

「しかも、小さく軽くなった飛沫核は勢いよく鼻や肺の奥まで吸い込まれます。冬には、ウイルスの変異がなくても、夏に比べて新型コロナウイルスの感染力が格段に強化されているのです」

 そのうえ、冬はヒトの抵抗力も大きく低下する。

「冬は冷気による刺激でヒトの血管をとりまく交感神経が活発となって、全身の血管が締め付けられます。体を動かすことも少なくなります。血流を良くして全身の栄養状態や免疫の働きを良好にする血管内皮機能が落ちます。異物を捕まえて外に押し出す繊毛もそれを取り巻く粘液も乾燥によりうまく働かず、人の免疫機能は落ちて体の組織を壊す炎症が広がります。夏の感染対策は落ちたウイルスによる接触感染を中心に考えればよかったのですが、冬は空気対策を中心に考えることが重要です。それにはマスクを過信しないことから始めるべきです」

 つい半年前まではマスクの予防効果には疑問があったことを思い出して欲しい。世界保健機関(WHO)が健康な人はマスクをしないように勧告していたことは記憶に新しい。

 しかし、その後の研究で、マスクに飛沫感染や空気感染をある程度予防する効果があることが証明された。だからこそ、世界的にマスク着用が推奨され、マスク着用の習慣のなかった欧米でも公的な場ではマスクが当たり前になった。

「今では、マスクをしていれば、話をしても密着しても安全という感覚になっている人が少なくありません。しかし、マスク着用では空気に漂うウイルスによる感染は防げません。狭い部屋での会議や会合、隔壁や間隔のない飲食店での会食、密閉された部屋での仕事などは手洗いとマスクをしていても感染リスクは高いのです。従って、換気の悪い狭い部屋で一緒に仕事をしたり会食をすれば、その場の全員に感染が広がるリスクがあることを想定するべきです。行動様式の分かっている家族や小グループでの会食などは比較的安全ですが、別行動している人たちが集まるときはマスクをしていてもクラスターリスクは極めて高いと考えるべきです」

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