がんと向き合い生きていく

温熱療法は治療中の適切な「温度管理」がきわめて重要

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「副作用がない温熱療法はどうですか?」

 進行した肺がんの患者さんが、ある診療所で勧められました。

 がん細胞は、42度以上で一定時間以上温めると死滅します。体の表面であればそれほど難しくなく温めることができ、温度測定も可能です。しかし、肺の中や体の奥を一定時間以上、42度以上にどのようにして加温するか、温度測定をするかが問題です。

 がんの周りの正常組織は、長く43度以上になるとやけどを起こしてしまいます。また、たとえ42度になったとしても、体は血流で体温を下げようとします。正常組織とがん組織の血管では、温度に対する反応は違うのですが、いずれにしても温熱療法は治療中の温度管理がとても大切です。

 以前、私は放射線治療科の医師とともに温熱療法の臨床研究チームに加わったことがあります。ネズミやミニ豚などでの実験も行いました。臨床的には、温熱療法単独ではなかなか期待される効果がなく、放射線治療か抗がん剤治療との併用で効果が得られると考えています。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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