最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

在宅医療を受けられるのはどんな人?限られた病気だけか

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 実際にあったケースを紹介しましょう。95歳の肺気腫の男性はひとり暮らし。通院は困難なものの、室内の移動や自立でのトイレは可能。「入院せずに40年間住み慣れ親しんだ都営住宅で過ごしたい」という希望があり、ケアマネジャーさんの紹介を受けて当院が介入し在宅酸素療養を始めました。現在もできることは自分でこなし、自宅で療養を続けています。

 40歳の女性の患者さんは、末期の子宮がんでした。当初は総合病院で抗がん剤治療を受けていたのですが、最後は夫婦で建てた思い出の詰まった家で家族に囲まれて過ごしたいと在宅療養を選択。すでに口から食べられなくなっていたので高カロリー輸液剤を静脈から点滴する在宅中心静脈栄養法を行い、またがんによる痛みは医療用麻薬で取り除きながら、最期まで穏やかに過ごされました。

 このようにさまざまな面で患者さんの要望に応え、負担を軽減できる在宅医療ですが、それでももし自宅で容体が急変した場合が不安ならば、ほかの協力医療機関(病院)への入院も可能です。今まで診てもらっていた病院の先生に引き続き診てもらいつつ、自宅で診療してもらうなど、柔軟に対応することもできます。

 在宅医療は24時間365日の体制で、まるでスーツを仕立てるように、患者さんの多様な生活に合わせながら、あらゆる病気や症状に対応するいわば「テーラーメード医療」なのです。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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