うつ病の復職を失敗しない!注目される再休職予防プログラム

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルスの影響で増加が指摘されているうつ病だが、うつ病では「復職のタイミング」も重要な治療ポイント。そこで改めて注目を集めているのが、復職支援と再休職予防を目的にした「リワークプログラム」だ。このプログラムを2005年に立ち上げた「メディカルケア大手町/虎ノ門」理事長の五十嵐良雄医師に話を聞いた。

「コロナによる在宅勤務が増え、その間、精神科医や産業医は会社が社員に在宅勤務をさせている状態で『復職可能』かどうかを判断せざるを得ませんでした。しかしそれで復職可能となった人の中で、在宅勤務中はなんとか仕事をこなせていたが、出社する従来のスタイルへ戻った途端、再休職となった人が少なからずいます。在宅勤務で復職しても継続できず、再休職した人もいます」

 というのも、在宅勤務での「復職可能」と、出社での「復職可能」とは病気の回復レベルが違うからだ。

 場所を選ばず柔軟に働けるテレワークと違い、コロナ禍でいや応なく始まった在宅勤務は「感染拡大を防ぐために自宅で」というもの。

 以前から自宅での仕事が普通だった人、会社で多くの人とコミュニケーションを取りながら仕事をするのが苦手な人にとっては在宅勤務がむしろ楽だが、小さな子供がいたり、部屋数が限られていたり、仕事経験が浅く上司の指示を常に仰ぎたい人には、苦痛でストレスがたまる。

「個人の要因が大きく関わってくるのが在宅勤務。この状態でうつ病の人の復職状況を的確に判断するのは困難です」

 それらをクリアするのに役立つのが、リワークプログラムだ。

■在宅勤務推奨でも復職可能かを見極める

 具体的には、週5日、朝から分院の「メディカルケア虎ノ門」まで通い通院訓練を行う。オフィスワーク(自主課題)やコミュニケーションについての正しい知識を学ぶなどして時間を過ごし、「主治医が考える復職可能レベル」からさらに高い「職場の求める回復レベル」までもっていく。

 2011年までのリワークプログラムを利用した人の復職達成率は、全体で76・6%、プログラムを終了し勤務先企業の復職判定に進んだ人においては98%。復職後の就労状況は、再休職することなく就労を継続している人は1年後では81・5%、2年後では70・1%だった。

 このリワークプログラムがコロナ禍で改めて注目を集めているのは、在宅勤務が推奨される状況においても、本当に復職可能かどうかを見極めることができるからだ。

「リワークプログラムでは、コロナ感染拡大防止を十分に考慮しながらも、患者さんにはメディカルケア虎ノ門まで来てもらい、プログラムをこなしてもらっています。朝から電車に乗って移動し、リワークプログラムに参加する多くの人と接し、一日の感情の波を一律に保って過ごせるようになることが、再休職防止のために不可欠です」

 その過程で、うつ病を悪化せずに在宅勤務を行える、その人にとっての注意事項を見いだし、さらに詳細に指導。同時に出社しての勤務が可能かも探っていく。

 たとえば、「子供が小さく、仕事部屋を確保できず、一日中家族と顔を突き合わせる在宅勤務はストレスがたまる」という人であれば、「仕事は喫茶店で」「朝昼夜とタイムスケジュールを決めて休憩時間もきっちり取る」など細かく伝える。これによって、在宅勤務であろうと、出社スタイルであろうと、うつ病を再発して休職とならない体制を整えていく。

 今後さらにリワークプログラムはコロナ以降の働き方に合わせてブラッシュアップしていく予定とのこと。「うつ病で休職し在宅勤務で復職したがうまくいかなかった」と思う人は、リワークプログラムを検討するのも手だ。

関連記事