進化する糖尿病治療法

HbA1cが低すぎる人は自覚症状のない低血糖を起こしやすい

身近な人に理解してもらうことが大切(写真はイメージ)/(C)PIXTA

 さらに低血糖が続くと、目まいや集中力低下などの中枢神経症状が出てきます。

 この段階までにブドウ糖や、以前に当欄で紹介した点鼻剤のグルカゴン(血糖値を上げるホルモン)で対処しなければ、意識レベルが低下して自分で対処できなくなる重症低血糖に至ります。重症低血糖は死につながる可能性がありますし、認知機能の低下など重篤な後遺症が出るケースもあります。

 低血糖が厄介なのは、非典型的な症状が出てくる場合や、自覚症状がない場合があることです。特に無自覚の低血糖では、速やかな対処をしようがなく、重症低血糖になりやすい。

 無自覚の低血糖を起こしやすいのは、高齢者、低血糖を何度も起こしている人、低血糖を起こしやすいタイプの薬(SU薬、インスリン注射薬)を使っていてHbA1cが低過ぎる人です。

 重症低血糖を起こしやすい人は特に、万が一のことを考えて、家族など身近にいる人に「〇〇〇のような状態になったら、意識がある場合はブドウ糖の摂取を。意識がない場合はグルカゴンを使うか、救急車を呼んで」と伝えておきましょう。ブドウ糖がなければ、甘い清涼飲料水や砂糖でも構いません。ただし、糖尿病の薬の種類によってはブドウ糖でなければならない場合もあります。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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