進化する糖尿病治療法

HbA1cが低すぎる人は自覚症状のない低血糖を起こしやすい

身近な人に理解してもらうことが大切(写真はイメージ)/(C)PIXTA

 糖尿病患者用IDカードも持っておくといいかもしれません。公益社団法人「日本糖尿病協会」が発行する名刺サイズのカードで、重症低血糖など緊急時に、糖尿病患者であることを周囲に示し、適切な処置を速やかに受けられるようにするものです。

 低血糖対策としては、ひとつは薬の見直しです。前述の通り、SU薬やインスリン注射薬は低血糖を起こしやすい。これらの薬は下限値が設定されており、HbA1cが6・5~7・5%を下回れば、薬の調整の検討をします。

 ただ、SU薬を使わないと血糖値がなかなか下がらない患者さんがいるのも確か。血糖値が下がったからと、SU薬から別の薬に切り替えた途端、HbA1cがめちゃくちゃ高くなってしまう。糖尿病治療を専門にしている医師なら、なんとかSU薬を使わないで血糖コントロールをしようと知恵を絞りますが、昔から漠然とSU薬を使っている医師では、「血糖値を下げるためにはやむを得ない」とSU薬を使い続けるかもしれません。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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