役に立つオモシロ医学論文

緊急事態宣言発令 自粛生活のストレスには「緑」の景色を!

窓から緑豊かな景色が見れなければ、動画配信などを視聴しましょう
窓から緑豊かな景色が見れなければ、動画配信などを視聴しましょう

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、自宅で過ごす時間が増えた方も多いでしょう。3密の回避や不要不急の外出自粛など、いわゆる社会的距離戦略は、感染拡大を抑止する効果が期待できます。他方で、このような生活は精神的なストレスを増加させることが最近の研究で分かってきました。

 緑豊かな自然環境は精神面の健康、すなわちメンタルヘルスに良い影響をもたらすことが知られています。とはいえ、コロナ禍の自粛生活では、そのような場所へ外出することも難しいでしょう。そんな中、自宅の窓から見える緑の景色と、コロナ禍におけるメンタルヘルスの関連性について検討した研究論文が、自然環境に関する学術専門誌に2020年11月17日付で掲載されました。

 この研究では東京に在住している3000人を対象に、2020年の6月初旬にインターネット上でアンケートを実施しています。自宅の窓から見える緑の景色とメンタルヘルスの関連性は、平均値を0とした効果尺度によって評価されました(数値が大きいほど関連性が強い)。なお、結果に影響しうる年齢、性別、生活習慣などの因子について、統計的に補正を行い解析されています。

 その結果、自宅の窓から見える緑の景色とメンタルヘルスの関連性は、自尊心で0・13、生活満足度で0・23、幸福度で0・16と統計的にも有意に高い一方で、孤独感はマイナス0・11、抑うつや不安は同0・10と統計的にも有意に低下していました。

 東京の住宅街で緑豊かな景色を自宅の窓から眺めることができる人は限られているでしょう。しかし、緑豊かな景色はインターネットの動画配信サービスでも視聴することができると思います。ストレスを感じたら、このような動画を見るだけでも気持ちが安らぐかもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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