科学が証明!ストレス解消法

達成したい目標はあえて誰かに公言した方がやる気が出る

公言することで推進する力が生まれる
公言することで推進する力が生まれる(C)日刊ゲンダイ

 明けましておめでとうございます。新しい年が始まりましたね。皆さんは、今年に達成したい目標や願いを掲げましたか? 「一年の計は元旦にあり」ではないですが、実は海外、とりわけ欧米では、「ニューイヤーズ・レゾリューション(=新年の誓い)」といって、新年の目標をあえて公言する文化が存在します。

 こういった公言は、心理学では「パブリック・コミットメント」といわれていて、科学的にもエビデンスがあるんですね。

 人間はひとたび決定を下したり、ある決意を実行しようとすると、自分にも他者にも圧力がかかって、自分が決めたコミットメントからブレないように一貫した行動を取るようになります。「一貫性バイアス」などと呼ばれていますが、言った手前、引くに引けなくなったりする状況も、そういった心理が働いているからです。

 コミットメントの実験として、カリフォルニアの家主を対象に、「自宅の庭に公共事業の看板を設置させてほしい」と頼んだ興味深いエピソードがあります。その看板はビッグサイズで、おまけに大きく下手な文字で「安全運転をしよう」と書かれていたものだったそうです。

 そんなダサい看板を敷地内に建てたい人なんていませんよね? 当然、8割の人が拒絶しました。ところが、あるグループの住民に限っては極めて好意的な反応が返ってきたというのです。なんと76%の承諾を得た――。いったい何をしたというのでしょうか?

 実は、このグループにだけは依頼の2週間前に、同じようにコミットメントを要請していました。その内容は、「安全運転をするドライバーになろう」と書かれた小さいシールを渡す程度のもの。「シールならいいか」と小さな要請に何の気なしに承諾してしまったそのグループは、別の大きな要請においても、一貫性のバイアスがかかってしまい拒否できずに承諾しようと思ったというわけです。

 余談ですが、世界的に著名な心理学者であるR・チャルディーニは、そういったさまざまな効果を検証し、まとめ上げた「影響力の武器」という名著を刊行しているので、興味がある方は一読するといいかもしれません。

 話を元に戻しましょう。「一貫性バイアス」によって、人に公言することでバイアスがかかり、推進する力が生まれることは確かでしょう。ですが、いきなり大きな目標を掲げるのではなく、小さな目標からスタートしたほうが賢明です。

 大きな目標を掲げると、逆にそれを達成できないことにストレスを感じてしまい逆効果になりかねません。ダイエットをするなら、「10キロやせる!」ではなく、現実的な「3キロやせる!」くらいの目標にすること。小さなシールを渡したように、小さな目標から掲げてください。

 日本にも「書き初め」という文化がありますが、口に出さずにしたためるあたりがお国柄なのでしょうね。趣があってすてきですが、あえて誰かに目標を告げることで、自分のやる気を促進させるのも一手。

 一貫性のバイアスを上手に生かして、2021年にやり遂げたい目標を実現させましょう!


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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