AIが築くクスリの未来

AIで最適な薬剤情報を提供するシステムが使われ始めている

写真はイメージ
写真はイメージ

 人工知能(AI)は、処理する情報(画像、音声、文章など)に応じて、さまざまなプログラムがあります。その中でも、画像や動画を処理して物体検出を行うものや、文章を自然言語処理という技術で処理するAIの研究開発が進んでいます。

 画像や動画データからの物体検出は、身近なものでは、自動車の自動運転などに用いられています。

 また、医療分野では診断支援ソフトとして多数開発が進んでいて、内視鏡画像で大腸がんを診断する診断支援ソフトウエア「EndoBRAIN―EYE」は、医療機器の承認を得ています。病変を判定する感度が95%、病変がないことを正しく判定する特異度は89%と、高い精度で病変を検出できるソフトウエアで、医療画像系AIの社会実装の好例です。

 一方、文章を処理分析する技術である自然言語系AIは、画像系AIに比べると何ができるのか、何に応用できるのかといったことがわかりづらく、認知度が低いといえるでしょう。実用例としては、受け答えロボットの応対などがそれにあたります。よりイメージの湧きやすい開発中の例としては、これまでは評価が難しかった自由記述アンケートの集計や、入学試験で行われる小論文の採点などが可能になります。

 医療分野では、カルテ記述の整理ができるようになります。たとえば、カルテ記述から病症名を特定し、医師の判断のサポートを行うサービス提供がアメリカでは行われています。

 また岡山大学病院薬剤部では、木村情報技術㈱と協力して自然言語系AIを薬の情報管理に応用する研究開発が行われていて、実際に「AI―PHARMA(アイファルマ)」というシステムが多くの病院や薬局で使用され始めています。このシステムは、最終的に患者や医療者に対して最適な薬剤情報を提供するためのシステムで、そのために必要な薬の文章情報をAIで処理し、整理するものです。次回、詳しくお話しします。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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