がんと向き合い生きていく

医師のちょっとしたひと言が気になる胃がん患者の胸の内

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

■がん相談支援センターにも立ち寄れず…

 年が明けて最初の診察では、担当医が前回のCT検査の画像を見ながら今度は首をかしげました。それを見たDさんはたずねます。

「先生、前回の診察ではリンパ節が気になるとおっしゃっていましたが……」

 すると、担当医から「ああ、リンパ節ですか? それは大丈夫だと思うのですが、げっぷは出ませんか?」という言葉が返ってきました。Dさんが「げっぷですか? 特にありませんが……どうしてですか?」と答えると、担当医は「いや、まあ、丑年ですから」なんて冗談を口にしました。

 結局、担当医がCT画像を見ながら「げっぷがないか」とたずねた理由が分からないまま診察は終わりました。Dさんは忙しそうにしている担当医を見ながら、「こんな小っちゃなことは、とても聞けない」と思いました。そして、今回もすっきりしないまま、がん相談支援センターを横目で見て帰宅したのです。

3 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事