がんと向き合い生きていく

医師のちょっとしたひと言が気になる胃がん患者の胸の内

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「胃がんの手術を受けてから体重は7キロ減ったままだし、下痢をしやすくなっている。でも、どうしてげっぷが気になったのだろうか」

 Dさんは理由を聞けなかったことを後悔しながら、担当医のちょっとした言葉や態度が気になるのは、自分が神経質になりすぎなのかもしれないと思い直しました。

 翌日、Dさんが勤めている会社で月1回の部内企画会議がありました。新しい営業企画案が2つ出され、1時間ほどで終わったのですが、会議中に、まだ入社3年目の女子社員から「企画案とまではいかなくても、ちょっとした考えや少しでも気になることを出し合って検討する会を設けたらどうでしょうか」との意見がありました。

 病院で“小さな気になること”をいつも聞けずにいるDさんは、「そうだ、そうだ。立派な企画書でなくとも、たとえ小さなことでも検討すべきだ」と思い、うれしくなりました。

 会議が終わり、意見を出した女子社員を褒めようと思って近寄ると、「部長、背筋が丸くなっています」と笑顔で言われました。Dさんは思わず姿勢を正しました。

 次回はがん相談支援センターを訪ねてみようかと考えているそうです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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