コロナ第3波に備える最新知識

「ランチ会食も自粛」というが…一人メシには落とし穴が

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 西村康稔経済財政・再生相が記者会見で、ランチを含めて極力外食を控えるよう呼び掛けた。緊急宣言の対象地域での飲食店に対し、午後8時までの営業時間短縮を要請しているが、「昼間なら皆とご飯を食べていいということではない」と語ったという。これを聞いて、「夜も昼も黙って一人メシすれば感染リスクを抑えられる」と受け取った人もいるかもしれない。しかし、それは誤解だ。そもそも、一人メシ=孤食には健康リスクがあり、人によっては長期間続けると困ったことになりかねない。公衆衛生の専門家である岩室紳也医師が言う。

「大事なのは一人メシではなく、感染経路と感染リスクを理解し、場面ごとにどのように感染経路を切断し、リスクを軽減するかを考え、実行することです。一人メシに努めても、手洗い後にいろんなところを触った手で食べ物や食後のたばこを口に運べば感染リスクは高まります。他人の飛沫が届くような場所に食べ物や食材・食器が置かれている店で食事をすれば、感染を防げません。店員や料理人がマスクなしは論外で、飛沫がダダ漏れのポリウレタンマスクやマウスシールドをつけているような店も危険です。料理人は不織布マスク以外はダメです。政府や専門家はこうした丁寧な科学的な説明をすべきだし、私たちも常に感染経路を考え、それを遮断する習慣を考え実行すべきです」

 そもそも、一人メシは気楽でいいと思われがちだが、体調を崩す原因のひとつだ。

「テレビやスマホなどを見ながらの“ながら食べ”は食事の満足度が低いという報告もあります。消化酵素がきちんと働き、栄養素を取り込むためには楽しい気持ちで食事をするのが重要です。もともと、一人メシの時間を楽しく過ごしている方であれば問題ないのですが、一人メシがつまらないと思いながら食べていると、逆に消化不良が起きてしまう可能性があるのです」

 こう言うのは「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」の著者で、愛国学園短期大学非常勤講師の古谷彰子氏だ。

 実際、肥満が高血圧、糖尿病を引き起こすのはご存じの通り。消化・吸収力が低下し、噛む力や嚥下力が低下している高齢者は、味気ない孤食が原因で少食・低体重になり、栄養不足からうつ病を発症したり、寝たきりになる恐れもある。弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長が言う。

「孤食が多い独居老人は一緒に食事する人がいる高齢者に比べて男性は2・7倍、女性は1・4倍、うつになる可能性が高くなることが報告されています。しかも、高齢者は、しゃべらず、よく噛まない生活が続けば、あごの筋肉などが衰えて、それをきっかけに体全体の筋肉が衰えていき、寝たきりのリスクが高まることもわかっています。オーラルフレイル(口の虚弱)の人は、そうでない人に比べて身体的フレイルになる人が2・4倍、筋肉量や筋力が低下するサルコペニアは2・1倍、要介護認定になる人も2・4倍で、総死亡リスクも2・1倍になるといわれているのです」

 感染症対策の基本は感染経路を正しく理解し遮断すること。それさえ守れば必ずしも一人メシが必要なわけではないのだ。

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