AIが築くクスリの未来

AIシステムで2万種の薬剤情報を現場のニーズに合わせて提供

写真はイメージ
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 前回、少しお話しした木村情報技術㈱は、多くの製薬企業の「チャットボット」を開発してきた企業です。チャットボットは、薬の問い合わせに対して自動応対をするロボットで、24時間365日途切れなく問い合わせに応対してくれます。

 一方で、チャットボットを導入している製薬企業がまだ少ないことや、公開されている情報が少ないこと、製薬企業からは入手できない情報があるのが現状です。薬に関する情報が欲しいときにいつでも入手できるようにするためには、製薬企業だけでなく、医療機関でも医薬品に関する情報を収集・管理し、欲しいときに引き出せるようにする必要があります。

 そうした体制を構築する基盤をつくるために、岡山大学病院薬剤部では木村情報技術の技術提供によって、医薬品に関する情報収集と管理をそれぞれの病院や薬局で行うシステム「AI―PHARMA(アイファルマ)」を開発し、全国の医療機関に無料で提供を始めました。よくたずねられる質問に対応できるよう、「表現の違い」を自然言語AIの補助によって補正することで、検索精度を高めたシステムです。

 これまでの製薬企業向けシステムは、1社100製品程度に対応できればよかったのですが、実際に医療現場で使われている薬は2万種類以上あるため、それらに対応できなければなりません。また、欲しい情報は単一の薬に限らず、複数の薬を比較したいケースも多いことから、より複雑な情報提供(入手)に対応した技術開発が必要でした。

 医療現場における薬に関する情報ニーズを満たし、AIのサポートによってスムーズに情報入手ができるようにすることで、最終的には個別化された薬の最適な使用に結び付くものと期待できます。

 AIは今後ますます医療分野でも活用されていくことでしょう。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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