がんと向き合い生きていく

食事でがんが消える?肺がんと診断された放射線技師の感想

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 妻は一通り目を通したようで、ほかの本の内容も教えてくれます。

「この本は『気を高めて厳しい食事療法を励行すれば治らない病気はない』だって。こっちの本によると『ゲルソン療法』という食事の方法があるらしくて、コーヒーを飲むことは原則禁止、それなのに4時間おきにコーヒーの浣腸をするみたい。ほかにも『尿を飲む治療』を紹介している本もあったわ。気味が悪いし変だよね。これってなんなんだろう?」

 Hさんは、「私はまだ早期のがんだけど、がんが再発した人や、医者からもう治療法はないなんて言われた患者さんは、きっと『今あるがんが消える』とか『治らない病気はない』と書いてある本を見ると買ってしまうかもしれないね」と答えました。

 そして、かつて職場研修の講義で、栄養士が話していた言葉を思い出しました。

「キノコをたくさん取ると免疫力が上がるとか、果物ががんに効くとかということはありません。食事は偏りなくいろいろな種類でバランス良く栄養を取るのがよいのです」

 Hさんの手術は無事に終了し、がんはすべて切除できて職場に復帰しています。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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