専門医が教える パンツの中の秘密

週2回以上で…中高年が知っておきたいセックスの健康効果

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 セックスの頻度は年をとるほど減る傾向にあります。しかし、海外の研究では、セックスを継続することによるさまざまな健康効果が報告されています。いくつか紹介しましょう。

 米国のニューイングランド研究所がマサチューセッツ州の1000人以上の中高年男性(平均年齢50代)を対象に、セックス頻度を16年にわたり追跡調査した研究があります。その結果、「週2回以上」セックスする男性は、「月1回未満」の男性に比べて、心臓病の発症が約45%も少なかったことが分かりました。

 英国でも同様な研究が約1000人の男性を対象に行われ、同じような結果が出されています。

 米国のウィルクス大学で学生112人を対象に行われた研究は、セックスと免疫力との関係です。1週間に行ったセックス回数で、「0回」「週1回以下」「週1~2回」「週3回以上」の4つのグループに分け、唾液を採取して分析したのです。

 唾液中には、体を細菌やウイルスから守る「グロブリンA」という免疫物質(抗体の一種)が含まれています。その量が多いか少ないかで免疫力の指標になるのです。結果では、「週1~2回」のグループがグロブリンAの量が断トツに多いことが分かりました。

 グロブリンAは、疲労やストレスがあると低下します。ですからセックス回数が多い(週3回以上)ほど、免疫力が高まるという結果にならなかったと考えられます。免疫力を高めるには「週1~2回」がちょうどいいようです。

 英国のコベントリー大学とオックスフォード大学の研究チームは、「セックス頻度を増やすことが、認知力を高めることにつながる可能性がある」と発表しています。この研究は50~83歳の男女(73人)を対象に認知能力テストを実施し、セックス頻度を調べたものです。セックスを週1回以上行っている参加者は、言語流ちょう性や視空間認知能力の点数が高い結果が出ています。ただし、セックス頻度が多いほど、注意力や記憶力、言語能力の点数が高いわけではなかったとしています。

 また、セックスパートナーがいなければ、男性はオナニーで射精するだけでもいいのです。米国ハーバード大学の研究では、月21回以上射精したグループが、そうでないグループより前立腺がんの発症が少なかったという結果が出ています。

 これらのセックスの健康効果は、はっきりしたことは解明されていませんが、共通するのは体の血流が良くなることです。月21回の射精は厳しいですが、週1~2回くらいの射精は続けていた方が体にはよさそうです。

尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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