上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

新型コロナと闘ういまの日本には「柱」が見当たらない

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 同時に、国の原子力政策を推進する「原子力委員会」と、安全確保のために規制・監視に関わる「原子力規制委員会」のように、いまの新型コロナ対策分科会や将来的な日本版CDCに対して拮抗する専門家組織の設置も望まれます。人員には十分な待遇を充て、今回で言えば新型コロナだけに集中して、それぞれがしっかり対策を講じる役割を与えるのです。こうした体制が整備され、覚悟と責任感を持った「柱」が生まれれば、国民も信頼して対策に取り組めるようになるでしょう。

■1次予防の重要さをより浸透させる

 もっとも、「柱」が見当たらない現時点でも、未来を見据えた対策が必要です。新型コロナ禍を糧にして、災いを乗り越えた“光明”に変えていかなければなりません。政府や新型コロナ対策分科会は、「どのようなことをすればウイルス感染を防げるのか」について、世界各国のデータや報告を分析し、あらためて標準的なウイルス感染予防対策を明確に示す必要があります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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