このときに免疫メモリーがつくため同じがんを二度と再発させないことも肝であり、それを実験で証明し、小林氏は多くの関連論文を発表している。
しかし、まだこの治療は進化の途上で、「これは終わりの始まり」だという。
昨年9月に「条件付き」で早期承認制度の適用が得られたのは、再発した頭頚部(扁平上皮がん)という「打つ手のなくなった患者」に限定される。国内では食道、胃がんの治験も進められているが、現時点での保険適用は頭頚部がんのみだ。
同11月に中央社会保険医療協議会で決定された薬価収載によると、1回の治療費は1人当たり600万円程度と試算される。保険が適用になる患者は高額療養費の対象となり、負担は数十万円。保険適用外の自由診療で受けるのであれば自己負担となる。
がんの最新治療は開発実用化までに莫大な研究・開発費用がかかるため、薬価への反映は当面は致し方ない側面もあるだろう。しかし、長年の研究が大きな節目を迎えた小林氏は11年にわたる臨床医経験から、がんで苦しむ患者を治し、副作用や後遺症も軽減できれば、との思いは強い。
「願わくば患者さんが諦めないで済む、体にも懐にも負担の軽い治療となっていって欲しいのです」