がんと向き合い生きていく

「O-リングテスト」がん治療に有効である科学的根拠はない

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 また別の書籍では、たとえばある人が右手でO-リングテストを行ったとき、左手にたばこを持っていた場合は、何も持っていない場合に比べて力が入らない。これは、その人の体にとってたばこは良くないことを表している――と書いてありました。

■患者が不利益を被る可能性も…

 私にはとても信じられません。これを科学的に証明する論文もないのです。Bさんは、科学的根拠のあるしっかりしたがん治療法を行っているのに、信じ込んだO-リングテストの結果によって薬の量を変えたりしたら、不利益になってしまうのでは……とても心配になりました。

 がんを治す目的で、O-リングテストと漢方薬を勧める医師もいるようです。O-リングテストを支持するある医師は、抗がん剤治療や放射線治療よりも、漢方薬の方が治療成績は良いと言うのです。もしもそうであるならば、それを唱える医師たちは、まずしっかりした科学的な証拠を出すべきです。そして、がんの専門の学会で議論されるべきだと思います。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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