免疫力アップのカギはミトコンドリア ワクチン開発者が解説

日本でも、もうすぐ…
日本でも、もうすぐ…(C)ゲッティ=共同

 新型コロナウイルスのワクチン接種が、日本でも、もうすぐ始まる。

 輸入予定のワクチンは3種類。そのひとつである米ファイザー社のワクチンは、厚労省が早ければ2月10日に専門部会を開いて「特例承認」の可否を決める方針だ。

 日本でもワクチン開発が進められている。アンジェス社によるワクチンで、昨年11月から本格的なフェーズ2/3の臨床試験(フェーズ2とフェーズ3の両方の性質を兼ねた試験)に入っており、今年度には100万人規模のワクチン提供が実現する見込みだ。

「同時に、有効性を高めた第2世代のコロナ感染予防ワクチンの開発も行っており、今年以降の実用化を目指しています」

 こう話すのは、アンジェス社創業者で、大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄付講座の森下竜一教授。森下教授は、コロナ対策としてワクチン接種とともに、体に備わる免疫のシステムが働きやすい環境を普段から整えておくことも重要だと指摘する。

「特に高齢者は、加齢で免疫力が低下しています。若い頃と同じように免疫力を維持する対策を講じるべき。そのカギとなるのが、ミトコンドリアです」

 免疫システムに関わっているのが免疫細胞で、免疫細胞は主に核、細胞膜、細胞質で構成されている。ミトコンドリアは細胞質の一つで、細胞の活動エネルギーとなるATP(アデノシン三リン酸)を合成する働きを担っている。

「細胞の活動エネルギーをどれだけつくれるかによって、それぞれの細胞がきちんと役目を果たせるかが決まります。それは免疫細胞においても同じ。つまりミトコンドリアがきちんと働けるかどうかで、免疫細胞が分担する免疫機能の役割を十分に発揮できるかが変わってくるのです。複数の論文で、ミトコンドリア量が減少するとエネルギー生産が減少し、免疫細胞の機能低下が起こることが報告されています」

■青魚、豚肉、牛肉、大豆から摂取できる

 このミトコンドリアのエネルギー生産に欠かせない物質が還元型コエンザイムQ10(以下CoQ10)だ。ミトコンドリアの内膜に豊富に存在し、ATPが生産される過程で利用され、ほかの物質では代替できない。日本では、軽度及び中等度のうっ血性心不全症状を改善する治療薬として用いられているほか、健康食品やサプリメント、化粧品の成分としても使われている。

「CoQ10は加齢で精神的・肉体的な負担が大きくなり酸化ストレスが増大すると、体内での消費量が増えます。一方で、加齢とともに体内での生産量が減少します」

 コロナは高齢者ほど重症化のリスクが高い。免疫システムを適切に働かせるために、CoQ10を積極的に摂取したい。

 なお、CoQ10投与でインフルエンザウイルスの増殖が抑制された動物実験の結果や、人間の臨床試験でCoQ10摂取で免疫指標が増加した結果など、CoQ10と免疫が関係していることを示す研究結果は複数ある。

「体内で生産される以外に食品からも摂取できます。イワシやサバなどの青背の魚、豚肉、牛肉、大豆などに豊富です。ただし食事量から取れるのは1日5ミリグラム程度。CoQ10の十分な効果を期待するには成人で1日100ミリグラムの補給を推奨するという研究報告があり、サプリメントを活用した方がいいでしょう」

 CoQ10の人間に対する臨床試験は膨大な数があり、安全性が確認されている。健常者を対象としたCoQ10を1日300ミリグラム、4週間摂取した臨床試験では、確かに安全と評価されており、日本人が1日150ミリグラムを1年間摂取した臨床研究でも、CoQ10が原因と考えられる重篤な有害事象は認められていない。

 コロナ対策にCoQ10を活用してはどうか。

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