しかし亡くなる直前になって、ご自身が寄稿された文章が掲載された小冊子を出版元から私に送ってこられました。M先生は、病の苦しみを、ご自身のがん経験を吐露し、私に伝えたかったことがあったのでしょう。ただ少なくとも、私に信仰を勧めているわけではないと思いました。
ご自身で書かれているように、M先生は苦しいときは「いつも如来さまと一緒」と思われていたのだろうか……とも考えました。
仏教学者の鈴木大拙氏の「妙好人」という講演があります。船大工からゲタ職人になった浅原才市という方のお話で、ゲタを削るときに自分が削っているのか、南無阿弥陀仏が削っているのか分からなくなる。自分が南無阿弥陀仏そのものになっていると話される……と紹介しています。
M先生の言われた「いつも如来さまと一緒」も同様で、本当の真の仏教の信仰というのは、そういうものなのではないか。私はそう思いました。
がんと向き合い生きていく