がんと向き合い生きていく

死が迫ったとき、「信仰」は本当に恐怖を和らげているのか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 宗教は永遠の命を主張し、だから「死は怖くない」と言い続けてきました。上智大学で長らく死生学の教壇に立ち、神父だったアルフォンス・デーケン先生が、「キューブラー・ロスの死の5段階の後には、神の下に行ける『希望』があるのです」と話されていたのを思い出します。

 お寺、神社、教会などは、宗教を真に信じていなくとも、ひとつの安らぎになっているのは確かなようにも思います。しかし死の直前になったとき、本当に恐怖を和らげているのか。信仰のない私には、それ以上は分かりません。

 日本人のアンケート調査では、多くの方が「仏教的無宗教」と回答しています。日本の文化として信仰のあつい方が少ない現状で、宗教なしで死の恐怖を乗り越える術を探す――。そんな探求を私はまだ続けています。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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