コロナ第3波に備える最新知識

コロナで嗅覚障害が…中高年は匂いを失うとどうなるのか?

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写真はイメージ(C)PIXTA

 新型コロナに感染すると嗅覚障害が起きることが知られているが、東京大学などの研究チームが動物実験でそのメカニズムを確かめたという。ハムスターを使った実験では、ウイルスが少量でも感染3日後までに嗅上皮の表皮がはがれ落ちて薄くなり、嗅覚障害が起きるような状態になったという。感染21日後には大部分は正常に戻ったが、元の厚さに戻らない部分もあった。

 別の研究では、発症から約2カ月がたち、PCR検査で陰性と確認された人の18~45%で、嗅覚障害が残っていることも報告されているという。

 これを聞き、“元に戻るなら安心”と思う人もいるかもしれない。しかし、中高年はそもそも嗅覚が加齢により衰えている。大丈夫なのか。

 日本耳鼻咽喉科学会認定専門医で、慶友銀座クリニック院長の大場俊彦氏に聞いた。

「人間がにおいを感じる仕組みは、最初に“においのもと”になる物質が鼻から吸い込まれ、鼻の奥にある嗅細胞に付着します。この刺激が電気信号に変換され、“嗅神経”を介して脳内に伝わり、複雑な情報処理が瞬時に行われた結果、においを感じるのです。このプロセスのどこか1カ所でも異常が生じると、嗅覚障害を起こしてしまうのです」

 嗅覚障害が生じる原因のひとつは病気だ。例えば風邪や慢性副鼻腔炎、花粉症などのアレルギー性鼻炎、嗅神経の障害、においに関係する大脳の部位が障害される脳挫傷、あるいは脳卒中や脳腫瘍などだ。

 加齢によるものもある。

「この場合、嗅覚障害というよりも嗅覚低下と呼ぶほうが正しいかもしれません。嗅覚の低下は、一般に男性では60歳代から、女性では70歳代から目立つようになるのですが、少しずつ低下していきますので、ほとんどの方は自分の嗅覚が低下していることに気付いていません。そういう人が新型コロナに感染しても嗅覚異常に気付きにくいし、感染したことに気づかないかもしれません。さらに感染で嗅上皮細胞がはがれた場合、若い人と同じペースで再生できる保証もないのです」

■認知症の発見が遅れる可能性

 嗅覚障害が生じると腐っている食べ物を口にしたり、煙のにおいに気づかず服をこがしたり、ガス漏れに気付かなくなったりすることが報告されている。

「においがわからないと味を感じにくくなるため、食事がおいしくなくなって食欲が減退。栄養不足から免疫低下や体力低下に陥ることがあります。あるいは刺激を求めて、以前より濃い味付けのものを好むようになり、塩分や糖分のとり過ぎで高血圧や糖尿病につながることもあります」

 さらに怖いのは認知症の発見が遅れる可能性があることだ。

「認知症の原因で日本人に一番多いアルツハイマー型認知症では、短期記憶をつかさどる部位と嗅覚に関わる部位が近いため、記憶障害の何年も前に実は嗅覚障害を起こしていることがあり、多くの方はそれを自覚していません。新型コロナで嗅覚障害を起こすと、認知症をより発見しにくくなるとも考えられます。むろん、においを失ったからといって全員認知症になるわけではありませんが、そのリスクのひとつになるということです。いずれにせよ、中高年は新型コロナ禍ではときどきカレーでも食べて、嗅覚が正常に保たれているかを調べるのもいいかもしれません」

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