独白 愉快な“病人”たち

起業家の岡本麻里さん 精神病棟への入院経験で学んだ考え方

岡本麻里さん(提供写真)

 それでも何も解決せず、最終的に「命を失えばわかってもらえるのかな?」と思うようになりました。

 これは今だから言えることですが、当時は感覚がマヒしていて、自分の精神状態が悪化していることも理解しきれていませんでした。

 精神科の隔離病棟に入院する前後のことはあまり覚えておらず、なぜ自分が入院しなくてはいけないのかも、初めは意味がわかりませんでした。 これを読んでくださっている方々は、精神病棟の治療がどんなものか、気になるところだと思いますが、私の場合は、想像していたよりも治療らしい治療はありませんでした。医師の面接も3日に1度程度、朝6時に起床して、夜8時に眠る以外にやることがありません。8時になんて眠れないので睡眠薬をもらうことも多かったです。

 面会も許されているのは親族である大人だけで、一番会いたい息子(当時2歳)には一切会えませんでした。それが今までのどんなことより、一番つらいことになりました。息子が幸せでいてくれることが私にとっての一番の幸せだと気付けたことにより、今まで人に求めてばかりいた幸せが、息子に見返りを求めずに与える幸せに変わりました。生きる理由がシンプルになりました。その後、シングルマザーという道も不安から希望に変わりました。

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