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腰<上>腰痛に効く3つの「ちょいストレッチ」専門医が指南

腰痛を改善するには「腰のこり」を改善すること
腰痛を改善するには「腰のこり」を改善すること(C)日刊ゲンダイ

 厚労省の調査によると、腰痛に悩む人は推定約2800万人。約4人に1人が腰痛を抱えていることになる。腰痛には、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの脊椎の疾患によって引き起こされるものもあるが、原因がよくわからない非特異的腰痛症も多い。

 では、X線などの検査で骨に異常が見られない腰の痛みは、なぜ引き起こされるのか。「1回1分 腰痛が消えるちょいトレ」(三笠書房)の著者である「戸田整形外科リウマチ科クリニック」(大阪府吹田市)の戸田佳孝院長が言う。

「腰が痛くなる大きな原因のひとつは、肩こりと同じで『腰回りの筋肉のこり』です。『こり』とは、筋肉が硬く縮んで、緩みにくくなっている状態ですが、知覚神経によって『痛み』として捉えられ、脊髄を通って脳に伝えられます。この痛みの情報が伝わるときに交感神経が刺激され、その作用で血管が収縮して細くなります。すると筋肉に運ばれてくる酸素が減り、筋肉が緩むときに必要な『ATP(アデノシン三リン酸)』という分子が不足します。こうなると筋肉のこりがますますひどくなり、さらに交感神経が刺激され、血管が収縮するという『腰痛の悪循環』を起こすのです」

 腰痛を改善するには、この悪循環を断ち切らなければならない。そのために第一にすべきことは、「腰のこり」を改善させることだという。

 そこで戸田院長が考案し、腰痛患者に実践してもらっているのが「ちょいトレ」と称する「ストレッチ」と「筋トレ」。どれも1分程度で簡単にできる。

 特に原因不明の腰痛を繰り返している既往歴のある人や、コロナ禍のリモートワークで長時間座りっぱなしで仕事をしている人などに実践してもらいたいという。

 まずは「ストレッチ」から紹介してもらうが、いくつか注意点がある。「ストレッチは痛みが出るまで強く引き伸ばしてはいけません。あくまで『気持ちがいい程度』にとどめることが大切です。痛みが出るまで引き伸ばされると、『伸張反射』と呼ばれる防衛機構が働いて筋肉が収縮し、筋肉が伸びなくなるからです。また、反動をつけずにゆっくり引き伸ばしていくことも重要です。ストレッチは体を柔らかくするために行うのではなく、ストレッチ自体に筋力アップの効果があるのです」

 ストレッチの中でも特におすすめなのが、相撲の力士の基本トレーニングとされる「腰割り」に「ねじる動作」を付け加えたもの。元メジャーリーガーのイチロー選手が、打席に入る前に脚を大きく開き、背筋を伸ばして骨盤を落としながら肩をひねっている場面をテレビで目にしたことがある人も多いと思うが、あの動作を行う。やり方はこうだ。

■腰割りねじりストレッチ

①まずは腰割りから始める。背筋を伸ばして、足を外側に広げてお尻を真っすぐ下に落とし、3秒数える。この状態で膝を5回曲げ伸ばしする(計15秒)。②腰割りの体勢から片方の手で内股を押しながら、肩を内側に入れて腰を回転させ、2秒数える。このとき横から見ると、背筋は斜め前に伸びるようにする。左右10回ずつ行う(計40秒)。

 この一連のストレッチを朝、昼、夕方の1日3回行う。

「腰割りはお尻の大臀筋を引き伸ばし、腰ねじりは背骨に付いている多裂筋を伸ばします。大臀筋や多裂筋は、座りっぱなしだと硬くなります。ですから、1時間以上座って仕事をしたら、気分転換を兼ねて55秒の腰割りねじりストレッチをやってみてください。腰痛を予防できます」

 次におすすめなのは、腰を反らす「マッケンジー体操」と、腰を曲げる「ウィリアムス体操」。本来、どちらの体操もいくつか種類があるが、「ちょいトレ」では、代表的な体操を各1種類ずつ行う。

■マッケンジー体操

①両手を頭の横に置き、うつぶせに寝る。②手のひらから肘を床につけ、上半身をゆっくり限界まで起こす。背中を反らした姿勢を20秒間保つ。

■ウィリアムス体操

①膝を曲げてあおむけに寝る。②膝下に両手を当て、膝を胸につけるようにゆっくり限界まで曲げていく。背中の筋肉や腰の筋肉が伸びるのを意識し、この姿勢を20秒間キープする。

 この2つの体操を、朝起きてすぐと夜寝る前に寝床で1日2回行う。ただし、腰の痛みが強くなる人はやめるようにしよう。これらのストレッチを2週間程度やってみて腰痛が改善しない場合は、整形外科を受診してリスクのある腰痛かどうか診断してもらおう。

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