進化する糖尿病治療法

寝ていればOK 楽チン「CAVI検査」で血管年齢をチェックする

夫婦で生活習慣改善 
夫婦で生活習慣改善 

 糖尿病、高血圧、脂質異常症がある人で、ぜひ受けてほしいのがCAVI(キャビ)検査です。この検査は同じ機器で同時にABI(足関節上腕血圧比)検査も実施できます。

「CAVI」は動脈の硬さを調べる検査で、大動脈を含む心臓から足首までの動脈硬化度がわかり、おおよその血管年齢が推定できます。ABIは、両腕と両足首の4カ所の血圧を同時に測定し、「足首の最高血圧÷上腕最高血圧」によって主に下肢動脈の狭窄や閉塞がわかります。上腕最高血圧は左右比べてどちらか高い方を採用します。

 たとえば、右上腕最高血圧が100(㎜Hg)、左上腕最高血圧が97の場合、右上腕最高血圧100を用いて計算。右足首最高血圧95、左足首最高血圧96の人では、右のABIが「95÷100」で0・95、左のABIが「96÷100」で0・96になります。

 ABIは0・9超1・4未満が正常で、0・9以下が「末梢動脈疾患の疑い」、1・4以上が「石灰化の疑い」「末梢動脈疾患の疑い」の双方、あるいはどちらか、という結果になります。ただし、ABI0・9以上でも血管の狭窄や閉塞を示す人が潜在することが報告されているので、あくまでおおよその目安としてください。

 CAVIとABIは、簡単に言えば現在の血管の硬さや狭窄具合を知ることができる検査です。これらの検査を数年おきに行い、その変化を見ることで自身の動脈硬化進行速度がわかります。数字が基準範囲外の場合はさらに脳梗塞や狭心症のリスクを確認するために、頚動脈の超音波や心臓血管CTなども推奨されます。

■準備から検査終了まで10分

 CAVI自体はとても楽なもの。あおむけでただ寝ていればOKです。薄手の服なら着替える必要もありません。準備から検査終了まで10分ほどしかかかりません。

 東京都在住の60代半ばの自営業の男性は1年前、主治医の勧めで先日、初めてCAVIとABIを調べました。

 結果は、どちらも基準値範囲内。男性は、この検査結果を受けて、より生活習慣改善に熱心に取り組めるようになったと言います。

 というのも、男性の糖尿病と高血圧がわかったのは、CAVI、ABIの検査を受ける半年ほど前。「年齢よりも若く見える」というのが自慢の男性は、「体も健康」という思い込みがあり、それまで健康診断を受けていませんでした。

 妻が自治体の無料健診を受ける時、「あなたも一緒にぜひ」と強く勧められ、数十年ぶりに血液検査などを受けました。そこで、糖尿病と高血圧が判明。生活習慣改善だけでは数値が下がらなかったので、薬物治療が始まりました。

 しかし糖尿病も高血圧もこれといって自覚症状はありませんから、男性は薬を飲むのが面倒で仕方なかったそうです。妻が料理教室に通い、張り切って作ってくれる糖尿病・高血圧対策の食事も、味気なくて仕方なかった。

 大好きだったたばこも、妻の目があるから渋々禁煙。食後の妻との運動がてらの散歩は、楽しい時もあれば、おっくうでやめたい時もある。それでもなんとか気持ちを奮い立たせて、半年間、生活習慣改善に取り組んできました。

「ただ、ちょうど飽きが出てきて、いろいろサボりたくなってきていた。そんなタイミングでCAVI、ABIを調べて、血管年齢は大丈夫だと自信を持った。今の生活習慣改善のおかげかなと思い、モチベーションが上がりました」と男性は言います。

 糖尿病、高血圧、脂質異常症の病歴が長い人ほど、知らないうちに動脈硬化が進行している可能性があります。自分の血管の状態を知ることは、前出の男性のように、生活習慣改善のモチベーションアップにもつながるかもしれません。まだ一度も受けたことがないようなら、主治医に相談してみてください。CAVI、ABIは人間ドックや心臓ドックでも受けられますよ。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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