ビートルズの食生活から学ぶ健康

新アルバム発表 ポールの衰えない意欲は食生活と深い関係が

2015年来日時のポール・マッカートニー
2015年来日時のポール・マッカートニー(C)日刊ゲンダイ

 ポール・マッカートニーの音楽活動への意欲は衰えることを知りません。昨年12月、コロナ禍の影響下にある英国で「マッカートニーⅢ」をリリースしました。予定されていたヨーロッパツアーがコロナによって中止になった昨年6月以降、時間ができたことで、このアルバムの制作が可能になったようです。ご存じのように、英国では一時、ロックダウン(都市封鎖)体制が敷かれました。英国において、コロナによる死者、感染者の数はともに日本以上です。

「僕の農場で家族と一緒にロックダウン生活を送っていた。毎日、自分のスタジオに通った」

 ポールはアルバムのライナーノート(解説文)の中でそう語っています。アニメーションの音楽に手を加える仕事を終えた後、次は何をしようかと考えた彼は、何年にもわたってやりかけていたものの、途中で終わってしまっていた曲作りに本格的にチャレンジします。

「もともと書きためてあった楽譜でレコーディングを始めて、だんだんと手を加えていった」そうです。

 そんな日々、ポールは仕事を終えて自宅に戻ると、写真家である次女のメアリー一家の姿がありました。4人の孫と過ごせることを「何と幸せなんだろう」と語っています。もちろんこのアルバムは、コロナ禍やロックダウン生活がモチーフになっているわけではありませんが、やはりビートルズを彷彿させるフレーズが随所に感じられ、コロナ禍にある全世界の人々を元気づけてくれる一枚だと感じました。

 こうしたポールの精力的な生き方は、彼の食生活と深い関係があると私は確信しています。

 マッカートニー家は、ポールをはじめ亡くなった元妻のリンダ、その長女のステラ、次女メアリーも菜食主義者になりました。特にメアリーは食に関する著作もあり、食についての関心も高い女性です。姉でファッションデザイナーのステラとともに「Meat Free Monday」(月曜日は肉を食べない)の活動にも参加しています。

 ロックダウンをはじめ行動の制限によって、人々は強い閉塞感を味わいますが、こうした環境下では、ストレスによっていわゆる「ロックダウン・シンドローム」に陥る人が少なくありません。

2020年末に新アルバムをリリース!
2020年末に新アルバムをリリース!(提供写真)

「ロックダウン・シンドローム」という言葉は、昨年の5月ごろに登場しました。医学的に明確な定義はなされていません。

 しかし、ロックダウンによって生じる人間の不安、悪心、鬱状態、不眠などに起因するものとされます。それに伴って、食道、胃、十二指腸に引き起こされる症状、さらには腹痛、下痢、便秘などの過敏性腸症候群、片頭痛などのさまざまな症状の総称と考えていいでしょう。

 日本では、英国のようにロックダウン体制は敷かれませんでした。しかし、私のクリニックでも「胸やけがする」といった症状に加えて、便秘、腹痛、腹部の膨満感を訴える方が、例年よりも多くおられます。このような方々に、私は精神的なストレスを軽減するために、食事療法、軽いウオーキングなどの運動療法をすすめています。こういうケースでは、胃や腸に負担をかけないために野菜中心の和食がおすすめです。

 和食ばかりではありません。すでに紹介済みですが、リンダの著書「リンダ・マッカートニーの地球と私のベジタリアン料理」(文化出版局刊)には、ロックダウン・シンドローム回避に役立ちそうな料理が紹介されています。

 肉類を使わないマカロニのチーズ焼き、豆のタコス、カリフラワーのグラタン・メキシコ風、野菜のギリシャ風シチュー、ラタトゥイユ、野菜カレー、ガスパチョ、バナナケーキなどさまざまです。

 ちなみに、リンダは菜食主義にかなう料理のひとつとして「キュウリとワカメの酢の物」も紹介しています。

松生恒夫

松生恒夫

昭和30(1955)年、東京都出身。松生クリニック院長、医学博士。東京慈恵会医科大学卒。日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。地中海式食生活、漢方療法、音楽療法などを診療に取り入れ、治療効果を上げている。近刊「ビートルズの食卓」(グスコー出版)のほか「『腸寿』で老いを防ぐ」(平凡社)、「寿命をのばしたかったら『便秘』を改善しなさい!」(海竜社)など著書多数。

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